施工管理技士は、建設・インフラ・通信工事などの現場で施工管理を行うための国家資格です。施工管理技士として活躍している人の多くは、その専門性の高さから平均より高い年収をもらっている場合も少なくありません。会社によっては、施工管理技士の資格取得を勧めていることもあります。しかし、「資格の難易度」や「資格を取るメリット」がわからず、受検するかどうか悩んでいる人もいるのではないでしょうか。
この記事では、施工管理技士の資格について解説します。難易度や受検資格、取得メリットも解説しているので、ぜひ参考にしてください。
施工管理技士とは

施工管理技士とは、さまざまな工事現場で、工事の管理・監督などの責任ある業務を担うための国家資格です。施工管理技士になると、主に下記4つの仕事内容に携わることになります。
- 安全管理
作業員や現場の近隣環境への安全を守る仕事 - 品質管理
成果物の品質を管理する仕事 - 工程管理
成果物完成までの工程を管理する仕事 - 原価管理
人件費・材料費などの経費を計算し、予算内に抑える仕事
施工管理技士は、直接工事の作業には関わらないものの、作業員への指示・依頼主とのやり取りまで行うため、工事に関するすべての責任を負っているといえます。施工管理技士になるためには、7種類ある資格の1級もしくは2級のいずれかを取得しましょう。
施工管理技士補とは
施工管理技士補とは、令和3年から改正された法律によって定められた、施工管理に関する新たな制度のことです。現在、日本の建築・土木・設備などの、建設業全般における人手不足により、幅広い人材が活躍できる環境を整えるため、施工管理技士補が生まれました。
施工管理技士補の資格は、施工管理技士とは別に施工管理技士補としても2級・1級が設けられています。施工管理技士補は、監理技術者のアシスタントとして現場に配置され、監理技術者はほかの現場との兼任が可能です。これにより、施工管理技士の人手不足解消が期待されています。

施工管理技士の資格試験

施工管理技士資格の資格試験について解説します。これから施工管理技士の資格を受ける人や受けるか悩んでいる人は、チェックしておきましょう。
第一次検定・第二次検定の2段階
施工管理技士の試験は、 7種類の資格すべてに第一次検定・第二次検定の2段階が設けられています。
第一次検定・第二次検定の概要は下記の通りです。
- 第一次検定
施工管理技術のうち、基礎知識および必須スキルの有無を判定する - 第二次検定
施工管理技術のうち、実務経験に基づいた管理・指導・監督に関わる専門知識およびスキルの有無を判定する
第一次検定に合格すると「施工管理技士補」、第二次検定に合格すると「施工管理技士」の資格を取得できます。
試験は筆記
施工管理技士の試験は、2級・1級および第一次検定・第二次検定ともに「マークシート形式」と「記述式」の筆記試験です。マークシート形式の試験は、出題された問題のうち任意で選択した問題のみを答えます。
筆記試験のみのため、過去問や演習問題に取り組み、基礎知識をしっかり学んでおくことが合格への近道です。ただし、建設機械施工管理技士の第二次検定のみ、建築機械を操作する実務試験が採用されています。
施工管理技士2級・1級の違いと受検資格

施工管理技士2級・1級の違いと受検資格について紹介します。どのレベルを受けると良いのか、自分に受検資格があるかを確認しておきましょう。
施工管理技士2級・1級の違い
施工管理技士資格には2級と1級があります。それぞれの違いは、担当できる業務内容です。また、主任技術者を目指す場合は2級を、監理技術者を目指す場合は1級を取る必要があります。1級を取得すると、大規模な工事に責任のある立場で関われるようになり、収入アップにもつながります。
受検資格
施工管理技士資格の2級・1級は、それぞれ受検資格が異なります。下記は令和6年4月に改正された新制度による受検資格です。
2級施工管理技士
第一次検定 | 第二次検定 |
---|---|
17歳以上 (当該年度末時点) | 2級第一次検定合格後、実務経験3年以上(建設機械種目については2年以上) 1級第一次検定合格後、実務経験1年以上 |
参照:国土交通省|令和6年度以降の技術検定の基本的な方針について
1級施工管理技士
第一次検定 | 第二次検定 |
---|---|
19歳以上 (当該年度末時点) | 1級第一次検定合格後、 実務経験5年以上 特定実務経験(※)1年以上を含む実務経験3年以上 監理技術者補佐としての実務経験1年以上 2級第二次検定合格後、 実務経験5年以上(1級第一次検定合格者に限る) 特定実務経験(※)1年以上を含む実務経験3年以上(1級第一次検定合格者に限る) |
- 特定実務経験
請負金額4,500万円(建築一式工事は7,000万円)以上の建設工事において、監理技術者・主任技術者(当該業種の監理技術者資格者証を有する者に限る)の指導の下、または自ら監理技術者・主任技術者として行った経験のこと。
参照:国土交通省|令和6年度以降の技術検定の基本的な方針について
新制度では施工管理技士の全検定種目で統一された受検資格が設定されていますが、検定種目ごとに基本の受検資格要件に準ずる条件もあります。詳しく知りたい人は下記の記事をご覧ください。

施工管理技士7種類の資格難易度

施工管理技士7種類の資格難易度を、過去の合格率を交えて紹介します。自分が受検する際の基準にできるため、ぜひ参考にしてみてください。
建築施工管理技士
建築施工管理技士の受検者数・合格率は下記の通りです。
等級 | 検定区分 | 受検者数 | 合格者数 | 合格率 |
---|---|---|---|---|
2級 | 第一次検定 | 27,004人 | 11,421人 | 42.3% |
第二次検定 | 14,909人 | 7,924人 | 53.1% | |
1級 | 第一次検定 | 27,253人 | 12,755人 | 46.8% |
第二次検定 | 13,010人 | 5,878人 | 45.2% |
引用:国土交通省|令和4年度1級建築・電気工事施工管理技術検定「第一次検定」合格者の発表
国土交通省|令和4年度 建築・電気工事施工管理技術検定(1級・2級) 「第一次検定(2級後期)」及び「第二次検定」合格者の発表
建築施工管理技士の試験は、2級・1級ともに少し難易度が高い印象があります。ただし、第二次検定の合格率は50%前後であるため、第一次検定に合格し、その後もしっかり勉強すれば合格できるでしょう。
土木施工管理技士
土木施工管理技士の受検者数・合格率は下記の通りです。
等級 | 検定区分 | 受検者数 | 合格者数 | 合格率 |
---|---|---|---|---|
2級 | 第一次検定 | 27,461人 | 17,565人 | 64.0% |
第二次検定 | 32,351人 | 12,246人 | 37.9% | |
1級 | 第一次検定 | 38,672人 | 21,097人 | 54.6% |
第二次検定 | 24,462人 | 7,032人 | 28.7% |
引用:国土交通省|令和4年度1級土木施工管理技術検定「第二次検定」の合格者の発表
国土交通省|令和4年度 2級土木施工管理技術検定 「第一次検定(後期)」及び「第二次検定」合格者の発表
2級・1級どちらとも第一次検定の合格率は高い傾向にありますが、第二次検定は3割近くとなっています。しかし、難易度はそれほど高くなく、しっかり対策しておけば問題はないでしょう。
電気工事施工管理技士
電気工事施工管理技士の受検者数・合格率は下記の通りです。
等級 | 検定区分 | 受検者数 | 合格者数 | 合格率 |
---|---|---|---|---|
2級 | 第一次検定 | 8,027人 | 4,466人 | 55.6% |
第二次検定 | 4,768人 | 2,947人 | 61.8% | |
1級 | 第一次検定 | 16,883人 | 6,458人 | 38.3% |
第二次検定 | 7,685人 | 4,537人 | 59.0% |
引用:国土交通省|令和4年度1級建築・電気工事施工管理技術検定「第一次検定」合格者の発表
国土交通省|令和4年度 建築・電気工事施工管理技術検定(1級・2級) 「第一次検定(2級後期)」及び「第二次検定」合格者の発表
電気工事施工管理技士の試験は、1級の第一次検定以外合格率が55%を超えています。しっかりと対策をしておけば、合格は難しくない資格だといえるでしょう。
管工事施工管理技士
管工事施工管理技士の受検者数・合格率は下記の通りです。
等級 | 検定区分 | 受検者数 | 合格者数 | 合格率 |
---|---|---|---|---|
2級 | 第一次検定 | 11,051人 | 6,274人 | 56.8% |
第二次検定 | 8,316人 | 4,962人 | 59.7% | |
1級 | 第一次検定 | 16,839人 | 7,231人 | 42.9% |
第二次検定 | 6,618人 | 3,769人 | 57.0% |
引用:国土交通省|令和4年度 1級管工事・電気通信工事・造園施工管理技術検定 「第一次検定」合格者の発表
国土交通省|令和4年度管工事・電気通信工事・造園施工管理技術検定(1級・2級) 「第一次検定(2級後期)」及び「第二次検定」合格者の発表
管工事施工管理技士の試験は、合格率が高水準となっています。基本的な対策をしておけば、問題なく合格できるレベルだといえるでしょう。ただし、2021年度の合格率は24.0%だったため、年によって難易度が変化することに注意が必要です。
電気通信工事施工管理技士
電気通信工事施工管理技士の受検者数・合格率は下記の通りです。
等級 | 検定区分 | 受検者数 | 合格者数 | 合格率 |
---|---|---|---|---|
2級 | 第一次検定 | 3,074人 | 1,818人 | 59.1% |
第二次検定 | 3,557人 | 1,265人 | 35.6% | |
1級 | 第一次検定 | 7,300人 | 3,982人 | 54.5% |
第二次検定 | 5,630人 | 2,108人 | 37.4% |
引用:国土交通省|令和4年度 1級管工事・電気通信工事・造園施工管理技術検定 「第一次検定」合格者の発表
国土交通省|令和4年度管工事・電気通信工事・造園施工管理技術検定(1級・2級) 「第一次検定(2級後期)」及び「第二次検定」合格者の発表
電気通信工事施工管理技士の試験は、受検者数が少なく第二次検定の合格率が3割程度といった特徴があります。第一次検定は半数以上が合格しているため、第二次検定の対策が合格の鍵となるでしょう。
建設機械施工管理技士
建設機械施工管理技士の受検者数・合格率は下記の通りです。
等級 | 検定区分 | 受検者数 | 合格者数 | 合格率 |
---|---|---|---|---|
2級 | 第一次検定 | 6,785人 | 2,905人 | 42.8% |
第二次検定 | 3,826人 | 2,609人 | 68.2% | |
1級 | 第一次検定 | 2,560人 | 677人 | 26.4% |
第二次検定 | 866人 | 456人 | 52.7% |
引用:国土交通省|令和4年度建設機械施工管理1級、2級第一次検定合格者の発表について
国土交通省|令和4年度建設機械施工管理1級、2級第二次検定 合格者の発表について
建設機械施工管理技士の試験は、受検者数が少なく1級第一次検定合格率が低い傾向にあります。2級はしっかり勉強すれば問題ありませんが、1級を受ける場合は対策不足だと不合格のリスクが高まるでしょう。また、建設機械施工管理技士の第二次検定は実技試験ですが、半数以上の合格率のため実務経験を積んで対策しておくことで、合格確率が上がるでしょう。
造園施工管理技士
造園施工管理技士の受検者数・合格率は下記の通りです。
等級 | 検定区分 | 受検者数 | 合格者数 | 合格率 |
---|---|---|---|---|
2級 | 第一次検定 | 2,983人 | 1,691人 | 56.7% |
第二次検定 | 2,474人 | 1,005人 | 40.6% | |
1級 | 第一次検定 | 3,091人 | 1,360人 | 44.0% |
第二次検定 | 1,471人 | 677人 | 46.0% |
引用:国土交通省|令和4年度 1級管工事・電気通信工事・造園施工管理技術検定 「第一次検定」合格者の発表
国土交通省|令和4年度管工事・電気通信工事・造園施工管理技術検定(1級・2級) 「第一次検定(2級後期)」及び「第二次検定」合格者の発表
造園施工管理技士の試験は、受検者数が少ない中で、合格率は高い傾向にあります。しっかり勉強しなければ合格は困難ですが、対策を怠らなければ問題なく合格できるでしょう。
施工管理技士の資格を取得する4つのメリット

施工管理技士の資格を取得すると4つのメリットを得られます。
- 専門性が身に付く
- 収入が上がる
- 主任・監理技術者になれる
- 市場価値が高まる
自身のキャリアにとってメリットがあるだけでなく、施工管理技士資格を持った人材を採用することは企業側にもメリットがあるため重宝されます。施工管理技士の資格を取得するか迷っている人は、判断材料にしてみてください。
専門性が身に付く
施工管理技士の資格に合格するためには、専門知識やスキルを有している必要があります。そのため、資格試験の勉強をするだけでも高い専門性が身に付きます。また、施工管理技士の資格を実際に取得すれば責任のある業務を任されるため、より多くの実務経験を積むことができ、豊富な経験と専門性を有した市場価値の高い人材になれるでしょう。
収入が上がる
施工管理技士の年収は比較的高い傾向にあります。平均年収は440万円前後で、中には1,000万円程度稼いでいる施工管理技士の人もいます。また、2級施工管理技士資格でも十分な収入は得られますが、1級を保有していればさらに収入アップが期待できるでしょう。
また、転職する際にも施工管理技士の資格保有者は、収入アップを目的とした転職が成功しやすくなるのもメリットの一つです。
ネオコンストラクションでは
業界高水準の資格手当をご用意
1級施工管理技士資格をお持ちであれば「月5万円」、
2級施工管理技士は「月3万円」の資格手当を支給しております。
主任・監理技術者になれる
施工管理技士の2級保有者は「主任技術者」、1級保有者は「監理技術者」になれるメリットがあります。
- 主任技術者の役割
元請・下請け業者および請負金額に関係なく、建設業務を請け負った際には、工事現場に主任技術者を必ず配置する必要がある(監理技術者配置義務の例外あり) - 監理技術者の役割
元請業者が、総額4,500万円以上(建築一式の場合は7,000万円以上)の下請け契約を結んだ場合、特定建設業の許可を得るとともに「監理技術者」を現場に配置する必要がある
また、上記に加えて個人住宅の建設を除く工事で、請負金額が4,000万円以上(建築一式の場合は8,000万円以上)の場合、「専任の主任技術者⼜は監理技術者」を配置しなければなりません。施工管理技士の資格を取得することで、希少性を高め、実績を積むことができるのです。
市場価値が高まる
企業側のメリットは施工管理技士資格を持つ人材を雇用していると、公共工事の入札時の経営事項審査で有利に働くことです。公共工事の受注には、企業規模や経営状況以外にも「国家資格を保有する技術者が何人いるか」も審査の対象項目に含まれます。施工管理技士の資格を有していると、待遇が良くなるなど、転職する際のメリットとなるでしょう。
まとめ
施工管理技士の資格は全7種類あり、それぞれ2級・1級が存在します。2級・1級の違いは、携われる仕事内容です。1級を取得すれば、より大きな工事現場での業務に携われるようになり、収入アップにもつながります。
施工管理技士の資格試験は、第一次検定・第二次検定に分かれており、建設機械施工管理技士の第二次検定以外はすべて「マークシート形式」「記述式」の筆記試験です。どの施工管理技士資格を取得しても、キャリアアップや収入アップにつながるだけでなく、雇用する側の企業にもメリットがあるため、転職する際にも有利に働くでしょう。
ぜひこの記事を参考にして、施工管理技士の資格取得に挑戦してみてください。
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