電気通信工事施工管理技士とは?試験概要と合格率

電気通信工事施工管理技士とは?試験概要と合格率

電気通信工事施工管理技士は、令和元年に第1回の資格試験が実施された新しい施工管理技士です。ほかの施工管理技士資格に比べると、資格を取得するメリットや有資格者の活躍の現場、試験の概要などの情報はまだあまり多くはありません。しかし、30年ぶりに誕生した新しい施工管理技士資格として注目を集めています。

この記事では、電気通信工事施工管理技士の資格・試験概要や合格率、資格取得のメリットなどをご紹介します。

目次

電気通信工事施工管理技士とは

電気通信工事施工管理技士とは

電気通信工事施工管理技士は、施工管理技士資格の一種として国土交通省により平成29年に新設されました。

電気通信工事とは、建築物で電話や携帯電話、インターネットなどの電気通信を使用できるようにする工事の総称です。従来、電気通信工事は電気工事の一種として扱われていましたが、携帯電話やインターネットの普及により工事量が増加かつ複雑化したことや、今後の技術者不足への懸念などの理由により、電気通信工事に関する新しい資格として制定されました。

電気通信工事施工管理技士にはほかの施工管理技士と同様2級と1級があり、初めての技術検定は令和元年に実施されました。令和6年には第6回を迎えます。令和元年度の試験では、2級が7,015人、1級は1万3,538人が受検し、以後、2級・1級共に毎年数千人の技術者が資格取得を目指しています。

電気通信工事施工管理技士の資格を取得すれば、2級は主任技術者、1級は監理技術者として、安全管理や品質管理、工程管理などの施工管理業務に就くことができます。

参照:国土交通省|令和元年度 電気通信工事・造園施工管理技術検定(1級・2級)合格者の発表

電気通信工事施工管理技士の仕事内容

続いて、電気通信工事施工管理技士の仕事内容や、2級と1級でできる仕事の違いについて解説します。電気通信工事とはどのような工事か詳しく知りたい人も参考にしてください。

主な仕事内容

電気通信工事施工管理技士は、固定電話や携帯電話、インターネット、社内LANなどの電気通信の設置工事や電波障害の調査、基地局設置など、幅広い工事の施工管理を行ないます。

また、監視カメラやETC設備、入退室管理システムなどの情報設備、放送用送信設備をはじめとする放送機器設備工事の施工管理も、電気通信工事施工管理技士の仕事の範囲です。

新しく建築物を建てるときはもちろん、古い建物をリフォームする際も、電気通信工事は欠かせません。近年はオフィスビルや商業施設、マンションなどだけでなく個人の住宅でもインターネット工事や監視カメラ(防犯カメラ)などの電気通信関連の工事量が増えており、施工管理技士の需要も増しています。

2級と1級の違い

電気通信工事施工管理技士の2級を取得すると、主任技術者として施工管理業務に携われます。また、1級を取得すると監理技術者として施工管理業務を担うことが可能です。工事金額が4,500万円以上(建築一式工事は7,000万円以上)の場合には監理技術者の設置が義務づけられているので、大規模な工事で施工管理業務に就きたい場合は1級の取得を目指しましょう。

また、主任技術者は4,000万円未満の土木一式工事など、または8,000万円未満の建築一式工事ならば、複数の工事現場での兼務が可能です。

参照:国土交通省 中部地方整備局 建政部|専任の監理・主任技術者が必要な工事とは

電気工事施工管理技士との違い

電気通信工事施工管理技士の職務内容が、電気通信、情報設備、放送用送信設備に関する工事の施工管理なのに対し、電気工事施工管理技士は、照明設備や変電設備、発電設備、非常用電源設備、鉄道電気設備、信号機設備など、電気工事の施工管理に幅広く携われます。

電気工事施工管理技士は大きな電気を扱う工事の施工管理を手掛け、電気通信工事施工管理技士は弱い電気を扱う工事の施工管理を手掛けると分類される場合もあります。

なお、電気工事を行える電気工事士は送配電線の設置や屋内の内線工事などの電気通信工事も可能です。電気通信工事の中には電気工事を含むものが多いため、工事を施工する立場だと明確な区別が難しいかもしれません。しかし、施工管理業務は明確に分かれており、工事現場によっては電気工事と電気通信工事、両方の施工管理技士の設置が必要となります。

電気通信工事施工管理技士の年収はどれくらい?

電気通信工事施工管理技士の平均年収は300万円~1,000万円と幅があり、取得した級や勤務年数、スキル、年齢、仕事内容などによって変わります。

ただし、電気工事施工管理技士の平均年収が300万円~750万円なので、電気通信工事施工管理技士が電気工事施工管理技士よりやや高めの傾向です。これは、電気通信工事施工管理技士が新しい資格であり、需要に対して有資格者が少ないことが関係していると推測されます。

電気通信工事はこれからも需要が増える可能性が高く、有資格者の給与も当分は一定の高値を保ち続けるため資格を取得するメリットは大きいといえるでしょう。

電気通信工事施工管理技術検定の概要

電気通信工事施工管理技術検定の概要

電気通信工事施工管理技士の資格取得のためには、電気通信工事施工管理技術検定を受けなければなりません。ここでは、その試験の概要や受検資格をご紹介します。

電気通信工事施工管理技術検定には受検資格が定められていますが、令和6年の試験より資格が大幅に変わりました。ただし、令和10年度に実施される試験まで、移行措置として旧受検資格でも受検が可能です。

2級電気通信工事施工管理技士

2級電気通信工事施工管理技士の試験は第一次検定と第二次検定があり、第一次検定は前期と後期の年2回、第二次検定は年に1回実施されます。第一次検定に合格したうえで所定の実務経験を積むと第二次検定の受検資格が得られます。

受検資格・費用

第一次検定は17歳以上ならば誰でも受検が可能です。

第一次検定 受検資格

必要条件
17歳以上(受検年度末時点)

2級の受検資格を旧制度と新制度で比較すると以下の表の通りとなります。

第二次検定 受検資格

スクロールできます
旧制度第二次検定新制度第二次検定
大学(指定学科)卒業後・実務経験1年以上2級:第一次検定合格後、実務経験3年以上
短大・高専(指定学科)卒業後・実務経験2年以上
高校(指定学科)卒業後・実務経験3年以上
大学(指定学科以外)卒業後・実務経験1年6か月以上1級:第一次検定合格後、実務経験1年以上
短大・高専(指定学科以外)卒業後・実務経験3年以上
高校(指定学科以外)卒業後・実務経験4年6か月以上
電気通信事業法(昭和59年法律第86号)による電気通信主任技術者資格者証の交付を受けた者取得後実務経験1年以上
上記に当てはまらない場合実務経験8年以上

参照:国土交通省|令和6年度より施工管理技術検定の受検資格が変わります

より詳細な解説は、以下の参考ページより参照ください。

以前は学歴に応じて細かく指定されていた実務経験がわかりやすく「第一次検定合格後」のみに統一されたので、自分の学歴を詳しく振り返ることもなくなります。まったく畑違いの学部・学科を卒業した人でも、やる気と第一次検定に合格するだけの知識があれば資格取得が可能です。

2級の受検費用は、第一次検定・第二次検定とも6,500円(非課税)です。第一次検定だけ受検する場合はインターネットから直接受検申し込みのみ、一次・二次を両方受検したい場合は申し込み用紙も利用できます。

受検費用
第一次検定・第二次検定6,500円(非課税)

参照:一般財団法人 全国建設研修センター|2級電気通信工事施工管理技術検定

試験日程

令和6年の受検日程は、第一次検定が6月2日(日)、合格発表が7月2日(火)です。第一次検定の後期と第二次検定は11月17日(日)に行われ、合格発表が第一次検定は令和7年1月6日(月)、第二次検定は令和7年3月5日(水)です。日程は若干ずれるかもしれませんが、令和7年度も同じ時期に行われる可能性が高いと考えられます。

令和6年受検日程合格発表
第一次検定(前期)令和6年6月2日(日)令和6年7月2日(火)
第一次検定(後期)
第二次検定
令和6年11月17日(日)令和7年1月6日(月)
令和7年3月5日(水)

試験は、札幌、仙台、東京、名古屋、大阪など全国10~14都市で行われます。すべての都道府県では行われません。詳しくは「全国建設研修センター」に掲載されている試験地より確認してください。

1級電気通信工事施工管理技士

1級電気通信工事施工管理技士の試験も、第一次検定・第二次検定があります。令和6年度の試験からは従来の第一次検定の受検資格がなくなり、19歳以上ならば学歴・職歴に関係なく受検できるようになりました。したがって、実務経験がまったくない状態でも19歳以上ならば1級の第一次検定に挑戦できます。たとえば、大学の工学部や高専に在籍し将来は電気通信工事関係の仕事に就きたい人ならば、学生のうちに1級電気通信工事施工管理技士の第一次検定に合格しておくと、卒業後1年の実務経験で2級第二次検定の受検資格が得られます。

なお、第一次検定に受からなければ、どんなに実務経験があっても第二次検定の受検資格は得られません。2級を取得しても第一次検定免除にはならないので注意してください。

受検資格・費用

前述の通り、第一次試験は受検年度末時点で19歳以上であれば受検可能です。

第一次検定 受検資格

必要条件
19歳以上(受検年度末時点)

旧第二次検定の受検資格と新制度における第二次検定の受検資格の違いは以下の通りです。

第二次検定 受検資格

スクロールできます
旧制度第二次検定新制度第二次検定
大学(指定学科)卒業後・実務経験3年以上1級:第一次検定合格後
実務経験5年以上
特定実務経験1年以上を
含む実務経験3年以上

監理技術者補佐としての
実務経験1年以上
短大・高専(指定学科)卒業後・実務経験5年以上
高校(指定学科)卒業後・実務経験10年以上
大学(指定学科以外)卒業後・実務経験4年6か月以上2級:取得後
実務経験5年以上
(1級第一次検定合格
者に限る)
特定実務経験1年以上を含む実務経験3年以上(1級第一次検定合格者に限る)
短大・高専(指定学科以外)卒業後・実務経験7年6か月以上
高校(指定学科以外)卒業後・実務経験11年6か月以上
上記に当てはまらない場合実務経験15年以上

参照:国土交通省|令和6年度より施工管理技術検定の受検資格が変わります

1級の試験もかなり実務経験の条件がシンプルになりました。令和6年度から試験を受ける人はより受検資格を得やすくなったといえます。

より詳細な解説は、以下の参考ページより参照ください。

受検手数料は第一次検定と第二次検定それぞれ1万3,000円(非課税)です。両方受検する場合は2万6,000円になります。

受検費用
第一次検定・第二次検定1万3,000円(非課税)

参照:一般財団法人 全国建設研修センター|1級電気通信工事施工管理技術検定

試験日程

令和6年の受検日程は、第一次検定が9月1日(日)、合格発表は10月3日(木)です。第二次検定は12月1日(日)に行われ、合格発表は令和7年3月5日(水)です。

令和6年受検日程合格発表
第一次検定令和6年9月1日(日)令和6年10月3日(木)
第二次検定令和6年12月1日(日)令和7年3月5日(水)

1級は第一次検定・第二次検定共に年1回しか実施されません。2級同様、令和7年度も同じ時期に行われる可能性が高いでしょう。

試験地も、2級と同じ札幌、仙台、東京、名古屋、大阪など全国10~14都市で行われます。すべての都道府県では行われないため、「全国建設研修センター」に掲載されている試験地を確認したうえで受検する会場を決めてください。

資格取得までの流れ

資格取得までの流れは以下の通りです。

  • 2級・1級どちらの第一次検定を申し込むか決める
  • 全国建設研修センターのWebサイトにて試験日程を確認する
  • 第一次検定のみを申し込む場合はWeb申し込み、第二次検定を同時に申し込む場合は申し込み用紙を購入するかWeb申し込みを行うかを選択する
  • 全国建設研修センターのWebサイトに掲載されている受検の手引き(PDF)を確認して受検に必要な書類や写真を揃える
  • 期日までに申し込みを行う
  • 第一次検定を受検する
  • 第一次検定のみを受検した場合は合格したら実務経験を積む
  • 第二次検定を同時に受検する場合、第一次検定に合格したら第二次検定に進む
  • 第二次検定に合格して所定の手続きをすれば資格取得となる

第一次検定のみを受検する場合、第二次検定を受けるまで間が開きます。合格証などをなくさないように注意しましょう。

試験の難易度と合格率

令和3年度・令和4年度の電気通信工事施工管理技士検定の合格率は以下のとおりです。なお、2級の第一次検定は後期の合格率を掲載しています。

年度2級電気通信工事施工管理技士1級電気通信工事施工管理技士
第一次検定第二次検定第一次検定第二次検定
令和4年度70.0%35.0%58.6%30.1%
令和3年度59.1%35.6%54.5%37.4%

引用:国土交通省|令和3年度管工事・電気通信工事・造園施工管理技術検定(1級・2級)「第一次検定(2級後期)」及び「第二次検定」合格者の発表
国土交通省|令和3年度 1級管工事・電気通信工事・造園施工管理技術検定「第一次検定」合格者の発表
国土交通省|令和4年度管工事・電気通信工事・造園施工管理技術検定(1級・2級) 「第一次検定(2級後期)」及び「第二次検定」合格者の発表
国土交通省|令和4年度 1級管工事・電気通信工事・造園施工管理技術検定 「第一次検定」合格者の発表

表の通り、令和3年度、4年度の第一次検定は1級・2級とも50%を超えました。2級の第一次検定は、40問中24問以上(約60%以上)の正解で合格が可能です。17歳以上ならば誰でも受検可能なので、実務経験がまったくない人でも勉強をしっかりしていれば合格できます。

一方、1級の第一次検定は60問中36問以上(約60%以上)正解したうえで、応用能力(施工管理法)5問中2問以上(約40%以上)正解しないと合格できません。

第二次検定は、2級・1級とも記述式で過去の施工経験を論文形式で記述するなど、経験を積まなければクリアできない問題が出されます。そのため難易度は第一次検定よりも上がり、合格率も30%台です。

電気通信工事施工管理技士の資格を取得するメリット

電気通信工事施工管理技士の資格を取得するメリットはいろいろあります。ここでは、代表的な3つのメリットをご紹介します。

技術者としての信頼度向上につながる

2級・1級とも、第二次検定に合格して資格を取得するには一定の実務経験が必要です。そのため、有資格者は技術者として一定の経験があることの客観的な証明になり、大きな信頼を得られるでしょう。転職の際のプラスの評価にもつながります。

主任技術者・監理技術者になれる

2級を取得していれば主任技術者、1級を取得していれば監理技術者の専任を受けられます。主任技術者と監理技術者がいなければ現場で工事を進められません。電気通信工事の需要はこれからも増え続ける可能性が高いため、安定的に仕事を続けられます。

昇給や資格手当が貰える

資格の取得が出世や昇給のきっかけになる場合もあり、すぐに昇給や昇進が叶わなくても、資格手当がつけば収入アップが実現します。

電気通信工事施工管理技士の資格を取得するための勉強方法

電気通信工事施工管理技士検定は第二次検定に一定期間の実務経験が定められているため、仕事と勉強を両立しなければなりません。ここでは、資格を取得するための勉強方法と、それぞれの方法のメリット・デメリットをご紹介します。

独学で学ぶ

電気通信工事施工管理技士検定の参考書は複数発売されているので、独学が可能です。特に第一次検定は知識を問われる試験のため、独学でも十分に合格できる可能性があります。

独学のメリットは、自分のペースで勉強できる点です。一方、わからない問題が解決できないままになってしまいがちというデメリットもあります。また、第二次検定は論文形式の問題があるため、文章の作成が苦手な場合は独学では突破が難しいかもしれません。

通信講座で学ぶ

通信講座を利用すれば、独自のテキストを使って効率的に勉強できます。模擬問題を添削に出せば解説と共に送り返してくれるので、独学のようにわからない問題がそのままになってしまうこともないでしょう。

一方、自分で計画を立てて勉強しないと通信講座のメリットがいかせない点や、独学に比べて費用が高いのがデメリットです。

講習会で学ぶ

日本建築情報センターをはじめいくつもの団体が試験対策の講習会を開いており、専門的な知識を持つ講師の授業が受けられます。独学である程度勉強しておき、講習のときにわからない問題を質問するなど、限られた時間で効率的に勉強できます。一方、実施地域や時間が限られているのがデメリットです。

まとめ

電気通信工事施工管理技士は施工管理技士の中では新しい資格です。新しい分、ほかの施工管理技士よりも取得者はまだ少ない反面、ITの進化の流れなどを受けて需要は高く、取得するメリットが大きい資格です。

電気通信工事施工管理技士の資格取得に興味を持ったら、ぜひこの記事を参考に取得に向けた準備を進めてみましょう。

株式会社ネオコンストラクション
当社は、関東・関西を拠点に、日本全国の建設会社に技術者を派遣している人材派遣会社です。
未経験者からベテランまで幅広く採用し、一人ひとりの希望に沿った案件をご提案いたします。
当社において最も大切にしている価値観は『技術者ファースト』。技術者様一人ひとりが「自分と向き合ってもらえている」と感じてもらえるよう、営業・サポート担当の2名体制で本人をサポートいたします。
キャリアチェンジや異業種からの転職など、何でもお気軽にご相談ください!

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
目次