管工事施工管理技士という資格をご存じでしょうか。配管工事の専門家であり、配管工事を必要とする現場でその知識や経験をいかせる国家資格です。
この記事では、管工事施工管理技士の仕事内容に加え、試験概要、資格を取得するメリットなどを解説します。これから技術者として責任のある役割に挑戦したい人、転職などを考えている人はぜひご覧ください。
管工事施工管理技士とは

管工事施工管理技士とは、国土交通省が管轄する国家資格の一つで、配管工事における施工管理の専門家として認められた技術者のことです。
その業務内容は「施工管理技士」という言葉が表す通り、配管工事にかかる施工計画書の作成はもちろん、施工管理で重要となる五大管理(安全・品質・工程・原価・環境)を専門的に担う職種となります。端的にいえば、管工事現場の責任者のようなイメージです。
管工事施工管理技士の資格には2級と1級の区分があり、後述する国家試験に合格することで有資格者になれます。2級の有資格者は主任技術者・専任技術者としてのみ業務にあたることができ、1級の有資格者は主任技術者・監理技術者・専任技術者になることができます。
管工事施工管理技士の仕事内容
管工事施工管理技士の主な業務は、冷暖房設備、空調設備、上下水道管設備、吸排気ダクト、ガス管、浄化槽などの各種配管工事で、パイプやダクトを配置することです。配管工事そのものへの従事は無資格者でも可能ですが、工事現場で主任技術者・監理技術者・専任技術者として従事する場合は、有資格者であることが要件となります。
配管工事は設備工事に分類され、その複雑さは建物の規模に比例します。加えて、建築物では建築物と配管が干渉する問題が発生しやすく、関係工種間での調整が不可欠です。特に建築物におけるパイプやダクトと建築構造物との干渉時などには、設計変更の難易度から配管に変更が生じやすい傾向にあり、臨機応変な対応が求められるでしょう。
管工事施工管理技士の2級と1級で、仕事内容に大きな違いはありません。ただし、大規模工事現場を受注できる企業では監理技術者として配置できる1級管工事施工管理技士の需要が高いため、そうした企業への就職を希望するのであれば1級の取得を目指しましょう。
管工事施工管理技士の年収はどれくらい?
管工事施工管理技士の年収幅は、おおよそ400万円〜600万円となっています。ただし、土木・建築施工管理技士よりも専門性が高く、この範囲以上の年収となる人も少なくありません。
加えて、経験年数や年齢、主任技術者・監理技術者・専任技術者などの立場によっても年収には差があります。
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管工事施工管理技士の試験概要
次に、管工事施工管理技士の試験概要を詳しく解説します。
2級管工事施工管理技術検定
受検資格・費用
●受検資格
2級管工事施工管理技術検定は第一次検定と第二次検定があり、第一次検定は、当該年度末時点で年齢が17歳以上であれば誰でも受けることができます。
第一次検定
必要条件 |
---|
17歳以上(当該年度末時点) |
第二次検定は令和6年度以降から受検資格が変わっており、新たな受検資格要件は下記となっています。
第二次検定 受検資格(令和6年度以降)
受検資格要件 | 第二次検定の受検に必要な実務経験年数 |
---|---|
令和3年度以降の1級第一次検定合格者 | 合格後、1年以上の実務経験年数 |
令和3年度以降の2級第一次検定合格者 | 合格後、3年以上の実務経験年数 |
技術士第二次試験合格者 (土木施工管理技術検定のみ) | 合格後、1年以上の実務経験年数 |
ただし、令和6年度から令和10年度までの5年間は、制度の改正に伴う経過措置として、新たな受検資格と令和5年までの旧受検資格のどちらかに当てはまっていれば受検資格を得られます。
第二次検定 旧受検資格(令和5年まで)
学歴 | 管工事施工に関する実務経験年数 | |
---|---|---|
指定学科 | 指定学科以外 | |
大学 専門学校の「高度専門士」 | 卒業後1年以上 | 卒業後1年6か月以上 |
短期大学 高等専門学校 専門学校の「専門士」 | 卒業後2年以上 | 卒業後3年以上 |
高等学校 中等教育学校 専修学校の専門課程 | 卒業後3年以上 | 卒業後4年6か月以上 |
その他 | 8年以上 | |
技能検定合格者 | 4年以上 |
より詳細な解説は、以下の参考ページより参照ください。
●受検費用
受検費用は、第一次検定と第二次検定において下記の通りとなっています。
受検費用 | |
---|---|
第一次検定・第二次検定 | 12,700円 |
第一次検定または第二次検定のみ | 6,350円 |
試験日程・時間
試験は毎年1回、ほぼ同じ時期に実施されます。
試験日 | 時間 | |
---|---|---|
第一次検定(前期) | 毎年6月 | 10時15分~12時40分 |
第一次検定(後期) | 毎年11月 | 10時15分~12時40分 |
第二次検定 | 13時45分~16時00分 |
1級管工事施工管理技術検定
受検資格・費用
●受検資格
1級管工事施工管理技術検定は2級と同じく、第一次検定と第二次検定があり、第一次検定は、当該年度末時点で年齢が19歳以上であれば誰でも受けることができます。
第一次検定
必要条件 |
---|
19歳以上(当該年度末時点) |
2級と同じく、1級も第二次検定の資格要件が変更されました。第二次検定の受検資格要件は下記となっております。
第二次検定 受検資格(令和6年度以降)
受検資格要件 | 第二次検定の受検に必要な実務経験年数 |
---|---|
令和3年度以降の1級第一次検定合格者 | 合格後、5年以上の実務経験年数 |
合格後、特定実務経験1年以上を含む3年以上の実務経験年数 | |
合格後、監理技術者補佐としての1年以上の実務経験年数 | |
2級第二次検定(旧実地試験含む)に合格した後、1級第一次検定に合格した者 (1級第一次検定受検予定者を含む) | 2級合格後、5年以上の実務経験年数 |
2級合格後、特定実務経験1年以上を含む3年以上の実務経験年数 |
こちらも、令和6年度から令和10年度までの5年間は、経過措置が設けられており、新たな受検資格と令和5年までの旧受検資格のどちらかに当てはまっていれば受検が可能です。
第二次検定 旧受検資格(令和5年まで)
学歴 | 管工事施工に関する実務経験年数 | |
---|---|---|
指定学科 | 指定学科以外 | |
大学 専門学校の「高度専門士」 | 卒業後3年以上 | 卒業後4年6か月以上 |
短期大学 高等専門学校 専門学校の「専門士」 | 卒業後5年以上 | 卒業後7年6か月以上 |
高等学校 中等教育学校 専修学校の専門課程 | 卒業後10年以上 | 卒業後11年6か月以上 |
その他 | 15年以上 |
- いずれも、1年以上の指導監督的実務経験年数が含まれていること
学歴 | 管工事施工に関する実務経験年数 | ||
---|---|---|---|
指定学科 | 指定学科以外 | ||
2級管工事施工管理技術検定第二次検定の合格者 | 合格後5年以上 (本年度該当者は平成30年度までの合格者) | ||
2級管工事施工管理技術検定第二次検定の合格者、実務経験が5年未満 | 高等学校 中等教育学校 専修学校の専門課程 | 卒業後9年以上 | 卒業後10年6か月以上 |
その他 | 14年以上 |
- いずれも、1年以上の指導監督的実務経験年数が含まれていること
学歴 | 管工事施工に関する実務経験年数 | |
---|---|---|
指定学科 | 指定学科以外 | |
技能検定合格者 | 10年以上 |
学歴 | 管工事施工に関する実務経験年数 | |||
---|---|---|---|---|
指定学科 | 指定学科以外 | |||
専任の主任技術者の実務経験が1年(365日)以上ある者 | 2級管工事施工管理技術検定第二次検定に合格した者 | 合格後3年以上 | ||
2級管工事施工管理技術検定第二次検定合格後、実務経験が3年未満の者 | 短期大学 高等専門学校 専門学校の「専門士」 | ー | 卒業後7年以上 | |
高等学校 中等教育学校 専修学校の専門課程 | 卒業後7年以上 | 卒業後8年6か月以上 | ||
その他 | 12年以上 | |||
その他 | 高等学校 中等教育学校 専修学校の専門課程 | 卒業後8年以上 | 卒業後9年6か月以上 | |
その他 | 13年以上 |
学歴 | 管工事施工に関する実務経験年数 | ||
---|---|---|---|
指定学科 | 指定学科以外 | ||
指導監督的実務経験年数が1年以上、主任技術者の資格要件成立後、専任の監理技術者の指導のもとにおける実務経験が2年以上ある者 | 2級管工事施工管理技術検定第二次検定に合格した者 | 合格後3年以上 | |
(1年以上の指導監督的実務経験年数が含まれていること) | |||
高等学校 中等教育学校 専修学校の専門課程 | 指定学科を卒業後8年以上 |
参照:一般財団法人 全国建設研修センター|1級管工事施工管理技術検定
より詳細な解説は、以下の参考ページより参照ください。
●受検費用
受検費用は、第一次検定と第二次検定において下記の通りとなっています。
受検費用 | |
---|---|
第一次検定 | 12,700円 |
第二次検定 | 12,700円 |
試験日程・時間
本試験は毎年1回、ほぼ同じ時期に実施されます。
試験日 | 時間 | |
---|---|---|
第一次検定 | 毎年9月 | 9時45分~15時45分 |
第二次検定 | 毎年12月 | 13時00分~16時00分 |
資格取得までの流れ
次に、1級管工事施工管理技士の資格取得までの流れを解説します。例年、以下の順序で受検申し込みから合格証明書交付まで進みます。
- 第一次検定・第二次検定の受検申し込み(5月)
- 第一次検定受検票送付(8月)
- 第一次検定(9月)
- 第一次検定合格発表(10月)
→ 第一次検定合格証明書交付申請、第一次検定合格証明書交付 - 第二次検定受検手続き(10月)
- 第二次検定受検票送付(11月)
- 第二次検定(12月)
- 第二次検定合格発表(翌年3月)
→ 第二次検定合格証明書交付申請、第二次検定合格証明書交付
管工事施工管理技士の資格取得の流れは、1級・2級とも一般財団法人全国建設研修センターのWebサイト内に「受検の手引き」として詳しく記載されているので、そちらも併せてご確認ください。
合格基準や合格率・難易度
●2級管工事施工管理技士
試験に合格するためには、試験の合格率や合格基準・難易度の把握が重要です。
2級管工事施工管理技術検定の合格率は、第一次検定の前期と、第一次検定の後期・第二次検定に分けて公表されます。
年度 | 第一次検定 | 第二次検定 | |
---|---|---|---|
前期 | 後期 | ||
令和4年度(2022年度) | 50.4% | 56.8% | 59.7% |
令和3年度(2022年度) | 56.0% | 49.8% | 67.7% |
引用:国土交通省|令和4年度2級技術検定「第一次検定(前期)」合格者の発表
国土交通省|令和4年度管工事・電気通信工事・造園施工管理技術検定(1級・2級)「第一次検定(2級後期)」及び「第二次検定」合格者の発表
国土交通省|令和3年度2級技術検定「第一次検定(前期)」※合格者の発表~初の2級技士補が誕生!~
国土交通省|令和3年度管工事・電気通信工事・造園施工管理技術検定(1級・2級)「第一次検定(2級後期)」及び「第二次検定」合格者の発表
合格率が1級よりも低く感じられる理由の一つは、受検者数の母集団の影響があります。2級管工事施工管理技術検定は1級と比較して受検資格要件が緩いため受検者数の母集団が多く、合格者の割合が相対的に少なく見えます。合格率はあくまでも一つの目安として考え、積極的に受検を検討してください。
合格基準は、以下の通りとなっています。
合格基準 | |
---|---|
第一次検定 | 第二次試験 |
得点が60%以上 | 得点が60%以上 |
●1級管工事施工管理技士
1級管工事施工管理技術検定の合格率は、第一次検定と第二次検定に分けて公表されます。
年度 | 前期 | 後期 |
---|---|---|
令和4年度(2022年度) | 42.9% | 57.0% |
令和3年度(2022年度) | 24.0% | 73.3% |
引用:国土交通省|令和4年度 1級管工事・電気通信工事・造園施工管理技術検定 「第一次検定」合格者の発表
国土交通省|令和4年度管工事・電気通信工事・造園施工管理技術検定(1級・2級)「第一次検定(2級後期)」及び「第二次検定」合格者の発表
令和3年度 1級管工事・電気通信工事・造園施工管理技術検定「第一次検定」合格者の発表~初の1級技士補が誕生!~
令和3年度管工事・電気通信工事・造園施工管理技術検定(1級・2級)「第一次検定(2級後期)」及び「第二次検定」合格者の発表
なお、第一次検定はマークシート形式のため、記述式の第二次検定よりも合格率が低くなってしまう傾向にあります。
合格基準は、以下の通りとなっています。
合格基準 | |
---|---|
第一次検定 | 第二次試験 |
全体:得点が60%(60問中36問以上正解)以上 施工管理法(応用能力):得点が50%(7問中4問以上正解)以上 | 得点が60%以上 |
管工事施工管理技士の資格取得の際の注意点

受検資格でご紹介した通り、施工管理技術検定は、令和6年度から受検資格が変更となっています。
従来、1級試験では第一次検定から実務経験が問われていましたが、年齢制限のみの受検資格に変更されたことにより、若い世代の受検が容易となりました。第二次検定では実務経験が求められますが、実務経験の条件や年数が変更になっています。
2級でも、同様に受検資格要件が緩和されたことで、より多くの希望者が受検できるようになりました。
改定に伴う経過措置が設けられていますが、資格取得を考えた際には、しっかりと受検資格について確認をしておきましょう。
管工事施工管理技士の資格を取得するメリット
最後に、管工事施工管理技士の資格を取得するメリットをご紹介します。
さまざまなメリットがある中で特に大きなメリットとして考えられるのは、以下の3点です。それぞれ詳しく説明します。
- 転職・就職の幅が広がる
- ほかの資格が取得しやすくなる
- 監理技術者・主任技術者になれる
転職・就職の幅が広がる
有資格者を雇用する企業にとっては、監理技術者が増えることで工事の受注数や、専任技術者を配置できる営業所を増やすことができます。そのため、資格を有していれば、その分転職や就職に有利に働くでしょう。
また、公共事業を受注する際、企業に有資格者が在籍していることで技術力に5点の加点が見込まれることから、応札の向上にも貢献できます。
ほかの資格が取得しやすくなる
有資格者は、浄化槽設備士や給水装置主任技術者の資格を受検する際、2つの試験科目が免除になることから、類似資格が取得しやすくなります。また、有資格者で実務経験を2年以上積むと建築設備士の受検資格が得られることから、ほかの資格へもチャレンジしやすくなるでしょう。
監理技術者・主任技術者になれる
有資格者の大きなメリットは、監理技術者・主任技術者になれることです。1級の有資格者は特定建設業の専任技術者、一般建設業の主任技術者および監理技術者に、2級の有資格者は一般建設業の専任技術者、主任技術者になることが可能です。
まとめ
管工事施工管理技士は、建築物の工事が存在する限り不可欠な存在であり、さまざまな取得のメリットがあります。2級・1級に関わらず積極的に資格取得し、企業から必要とされる人材を目指すことで、大きな工事現場で活躍できる可能性、責任ある立場で従事できる可能性を高めることができるでしょう。
この記事を通して管工事施工管理技士にご興味をお持ちの際は、ぜひ資格取得にトライしてみてはいかがでしょうか。
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