建築設計の仕事は、デザインや見た目を決める意匠設計、安全性や耐久性を確保する構造設計、快適性や利便性を高める設備設計の3つに分けられます。しかし、それぞれの業務内容や必要とされる資格を詳しく理解している人は少ないのではないでしょうか。
この記事では、意匠設計、構造設計、設備設計の業務内容や、必要とされる資格、向いている人の特徴などを解説します。
建築設計の3業種とは?
建築設計の3業種である意匠設計、構造設計、設備設計はそれぞれが独自の役割を持っており、協力し合うことで建物ができあがります。まずはそれぞれの業種を詳しく説明します。
意匠設計の役割
意匠設計は、建物の用途に応じてデザインや見た目を決める役割を担います。具体的には、建物の形状、内部空間の配置、素材の選定、色彩計画などです。建物が美しく機能的であるように設計し、施主の要望を形にする力が求められます。
構造設計の基本
構造設計の仕事で基本となるのは、建物の安全性や耐久性の確保です。意匠設計で考えられたプランの構造を計算し、設計をプラッシュアップします。
自然災害が多い日本では、地震や台風、積雪などの影響を加味した設計が必須であるため、構造設計者は、建築基準法や耐震基準に沿って建物が安全に使用できるように設計を進める必要があるのです。また、建物の用途や規模に応じた素材の選定や配置も重要な役割となります。
設備設計の機能
設備設計は、建物内の快適性や利便性を高めるために必要な電気、空調、給排水、衛生、エレベーターなどのシステムを設計します。とりわけ近年は環境負荷を考慮した設計が重視されており、省エネ設備や再生可能エネルギーの活用も重要なテーマです。たとえば、太陽光発電や雨水利用システムの導入などがあります。
意匠設計
意匠設計は、建物のデザインを担当し、建物の形状や配置、内部空間の構成を考える仕事です。具体的な業務内容や必要とされる資格、求められるスキルや向いている人を見ていきましょう。
意匠設計の業務内容
意匠設計者は、施主の依頼を受けてから建物の竣工・引き渡しまで、長く案件に関わります。一般的な業務の流れは以下の通りです。
- コンセプトの作成
施主の要望や土地の特性をヒアリングし、コンセプトを作成していきます。住宅であれば家族のライフスタイルに合った空間設計、商業施設であれば顧客を引きつけるデザインなどを考える段階です。 - 設計図の作成
コンセプトをもとに具体的な設計図を作成します。平面図、立面図、断面図などの詳細な図面を作成し、施主や施工者との合意形成を経てデザインを具体化させます。 - 施主との打ち合わせ
意匠設計の業務進行中は定期的に施主との打ち合わせを行い、要望の反映や変更の確認をします。打ち合わせでの円滑なコミュニケーションがプロジェクトの成功には不可欠です。
意匠設計に必要とされる資格
意匠設計に必要とされる資格には、二級建築士と一級建築士が挙げられます。
- 二級建築士
都道府県知事が発行する、意匠設計に必要な国家資格です。住宅や小規模な建物の設計が可能になります。一級建築士を目指すほとんどの人が取得します。 - 一級建築士
国土交通省大臣が発行する、意匠設計に必要な国家資格です。大規模な建物を設計する場合や設計事務所を開業する際に必要となります。一級建築士を取得するには、建築士法に基づいた実務経験と国家試験の合格が必要です。
一級建築士について詳しく知りたい場合は以下の記事も併せてご覧ください。

意匠設計者に求められるスキル
意匠設計者には、デザイン力や構造・設備の知識力などが求められます。それぞれ詳しくみていきましょう。
創造的なデザイン力
意匠設計者には、施主の要望を理解し叶えるための独創的なデザイン力が求められます。建物の外観や空間構成を、単なる美しさだけでなく機能性も考慮してデザインする力が必要です。
図面作成のためのCADスキル
意匠設計者には、創作したデザインを正確に図面に起こすためのCADスキルも求められます。高いCADスキルがあれば正確で効率的な設計が可能となり、施工者との情報共有もスムーズにできます。
コミュニケーションスキル
意匠設計者には、コミュニケーションスキルも欠かせません。施主の意図を汲みとることはもちろん、プロジェクト全体を進行する役割も担うため構造設計者や設備設計者、施工者と調整を行うのに非常に重要です。
構造と設備の知識力
構造や設備の知識も求められます。どんなにデザインが優れていても、耐震性や機能性が考慮されていない建物であっては評価されません。また、構造設計者・設備設計者の設計が施主の要望や要件を満たしているかの確認も必要です。
意匠設計業務に向いている人
意匠設計者には以下のような人が向いているといえるでしょう。
- デザインや絵を描くのが好きな人
- 細部にこだわる人
- 柔軟な発想力がある人
- 忍耐力がある人
- 間取りを考えるのが好きな人
- 図面を作成するのが好きな人
施主の要望を実現させるためには豊富なアイデアが求められます。また、デザインや図面作成には時間がかかるため、業務自体が好きなことや忍耐力があることも大切な要素となります。
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構造設計
構造設計は、構造計算を通じて、地震や台風などの自然災害にも負けないような、安全性や耐久性の高い建物を生み出す仕事です。業務内容や必要とされる資格、求められるスキルや向いている人を解説します。
構造設計の業務内容
構造設計者は、建築基準法に適用するよう、建物の土台と骨組みを設計します。一般的な業務の流れは以下の通りです。
- 調査と計画
立地条件や周辺環境を詳細に調査し、構造計画を立案します。地盤の強度や地震のリスクなどを評価し、建物の基礎形式や柱・梁の配置を大まかに決定する段階です。 - 詳細設計の作成
調査と計画の内容をもとに、具体的な設計図を作成します。鉄筋や鉄骨、コンクリートの仕様、柱や梁の配置、接合部の詳細などを決める重要な業務です。建築基準法を遵守しながら、施主の要望やコスト制約にも配慮します。 - 現場での施工管理
建設工事が始まると、現場での施工管理を行います。設計図通りの施工が行われているかを確認しつつ、必要に応じて現場で生じる問題に対処する業務です。建築中に発生する予期せぬ問題に対して柔軟に対応する能力が求められます。
構造設計に必要とされる資格
構造設計に必要とされる資格には、一級建築士と構造設計一級建築士があります。
- 一級建築士
国土交通省大臣が発行する、構造設計に必要な国家資格です。一級建築士を取得すると、すべての建築物の設計が可能になります。二級建築士に比べて設計できる建物の規模や種類が大幅に広がるため、大型施設や複雑な構造物の設計に携わりたい場合は必須の資格です。 - 構造設計一級建築士
一級建築士よりも難易度が高く、構造設計の専門家としてのスキルを証明する資格です。この資格を取得すれば、高度な構造設計技術を必要とするプロジェクトへの参加機会が増えます。
構造設計者に求められるスキル
構造設計者に求められるスキルを4つご紹介します。どれも建物の安全性や耐久性を担保するために重要なスキルです。
構造力学・材料力学の知識
構造設計では、地震や風などの外部荷重に耐えられるかを計算するため、構造力学や材料力学の知識が欠かせません。これらの知識を活用して建物の安全性を科学的に分析し、最適な設計を導き出します。
計算・分析スキル
効率的かつ経済的な構造を設計するには、高度な計算力と分析力が必要です。安全性を確保しながらコストパフォーマンスの高い設計を実現できます。
建築基準法・構造規準の理解
構造設計では、法律や規準を守ることが不可欠です。建築基準法や関連する構造規準を熟知し、設計に反映させるスキルが求められます。法改正により生まれる最新の規制をしっかり理解し適用する力も重要です。
問題解決力とコミュニケーションスキル
設計中や施工中に発生する課題に柔軟に対応できる問題解決力も求められます。また、設計者は施主や施工業者など多くの関係者と連携するため、スムーズな意思疎通ができるコミュニケーションスキルも必要です。
構造設計業務に向いている人
構造設計者には以下のような人が向いています。
- 数値や計算に強く、精密な作業が得意な人
- 課題解決力があり柔軟に対応できる人
- 慎重で責任感が強い人
- 地道な作業を続けられる忍耐力がある人
- 数学や物理学が得意な人
- 細かい図面を作成するのが得意な人
構造設計は計算をする機会が多いため、数字や計算に強く、はじき出された数値を正確に図面に表現できる人が向いています。また、コツコツと根気強く作業を続ける力も必要です。
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設備設計
設備設計は、建物を機能させるために必要な電気や空調、給排水、衛生設備などを設計する仕事です。その業務内容や必要とされる資格、求められるスキルや向いている人を解説します。
設備設計の業務内容
設備設計者は、施主の要望をもとに、コストに配慮した給排水、衛生、空調、電気設備などの設計を行います。一般的な業務の流れは以下の通りです。
- 計画と要件の確認
建物の用途や規模に応じた設備要件を確認し、どのような機能を持たせるべきか、どの程度のエネルギー効率を目指すのかを、意匠設計者や施主と綿密に打ち合わせながら決定します。 - 設計とコスト管理
具体的な設計とコスト管理を行う段階です。たとえば、エアコンや給排水設備の位置、配線や配管の経路などを詳細に決定します。予算内での最適な設備選定を目指すうえでは、製品の性能やコストパフォーマンスの比較検討も重要です。 - 施工と管理・保守
施工業者と協力し、設計が正確に実現されるように施工します。竣工・引き渡し後も設備が安全かつ効率的に機能するよう、定期的なメンテナンスや保守計画を立てることも重要な役割です。
設備設計に有効な資格
設備設計に必須の資格はありませんが、一級建築士と設備設計一級建築士を保有していると有利になります。
- 一級建築士
国土交通省大臣が発行する、設備設計で有効な国家資格です。一級建築士を取得すると、すべての建築物の設計が可能になります。一級建築士の資格は建築全般に関する深い知識を持つことの証明であり、意匠や構造設計者とのスムーズな連携に有効です。 - 設備設計一級建築士
一級建築士の上位資格であり、設備設計に関する高度な知識や技術を持つことを証明します。必須資格ではないものの、持っていることで業務の信頼性が高まり、キャリアの選択肢も広がるでしょう。
設備設計者に求められるスキル
設備設計者にはどのようなスキルや知識が求められるのでしょうか?設備設計に必要なスキルや知識を4つご紹介します。
設備全般の専門知識
設備設計者には設備全般の専門知識が求められます。なぜなら、法規制や安全基準の正確な理解は、設計の質を左右する重要なポイントだからです。最新の技術やトレンドに常にアンテナを張っておくことも、効率的で環境に優しい設備設計につながります。
危険予測の能力
設備に不備があると火災や漏水などの重大な事故につながる可能性があるため、危険予測能力も求められます。設計段階でリスクを予測し、危険を未然に防ぐことが重要です。
CAD・BIMなどの設計ソフトのスキル
設計図や施工図を作成する際には、CADやBIM(Building Information Modeling:ビム)などの設計ソフトのスキルが不可欠です。設計ソフトを使いこなすことで、正確かつ効率的な設計が実現します。
コミュニケーションと協調力
設計や施工をスムーズに進めるためには、ほかの専門家との連携が必要不可欠です。特に意匠設計者や構造設計者、施工業者と密に連携をとる必要があるため、コミュニケーションと協調力が求められます。
設備設計業務に向いている人
設備設計者には以下のような人が向いています。
- 建物設備に技術的な興味がある人
- 専門知識を深めるのが好きな人
- 慎重で緻密な作業が得意な人
- 環境やエネルギー効率に関心がある人
- 図面を描くのが好きな人
- 新しい技術を学ぶのが好きな人
施主の要望とコストに配慮しつつ効率的かつ環境に優しい設備を設計する必要があるため、常に新しい知識や技術を学び、環境や設備分野にも興味のある人に向いています。設備に関するアイデアを正確に図面に表現することに熱意がある人にも向いています。
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建築設計者が活躍できる職場
建築設計者は、建物のデザインや構造・設備を考え、空間を創造する専門家です。その活躍の場は多岐にわたります。ここでは、建築設計者がそのスキルや知識をいかして働ける職場を具体的にご紹介します。
建設会社(ゼネコン)
ゼネコンは、建築設計者が多く活躍している職場の一つです。ゼネコンでは設計から施工管理までを一貫して行うことが多く、設計者はプロジェクトの初期段階から活躍できます。また、国内外の大規模なプロジェクトに参加できるチャンスもあります。
設計事務所(アトリエ系・組織設計事務所)
設計事務所は、建築設計者にとってもっとも馴染みのある職場でしょう。デザインに特化した業務が中心となり、経験を重ねればアイデアを存分に発揮できます。建築家の個性や理念が強く反映されるアトリエ系の事務所や、チームで設計を行う組織設計事務所など、自分の特性ややりたいことに合った環境を探してみましょう。
ハウスメーカー
ハウスメーカーは住宅の設計・販売を専門とする企業で、多くの建築設計者が活躍しています。安定した需要のもと長期的に働きやすい職場環境が整っており、住宅設計に特化したスキルが磨かれるため、住宅市場でキャリアアップを目指す人に適しています。
不動産会社
不動産会社でも建築設計者が活躍しています。不動産開発やリノベーションプロジェクトなど、建物の企画段階から関わる業務が中心です。不動産市場の動向を学びながら、建築設計だけでなくマーケティングや資産運用の知識も身につけられます。
官公庁や地方自治体
公共の建物の設計や都市計画に携わりたい人にとっては、官公庁や地方自治体も建築設計者としての活躍の場となります。公共性の高いプロジェクトに携わり、地域社会に貢献できる点が魅力です。
コンサルティングファーム
コンサルティングファームでも建築設計者の需要が高まっています。建物の設計だけでなく、戦略的なアドバイスやプロジェクト管理も仕事に含まれます。それによりビジネスや経営に関する知識が得られるため、視野を広げたい人に適しています。
まとめ
建築設計は、デザインや見た目を決める意匠設計、安全性や耐久性を確保する構造設計、快適性や利便性を高める設備設計に3つに分類できます。それぞれに業務内容や必要な資格やスキル、向いている人の特徴が異なるため、就職や転職の際にはそれぞれをしっかりと理解しておくことが重要です。
建築設計の仕事を目指す際にはここで解説した内容を参考にしながら、自身にベストな役割はどれか、しっかりと検討しましょう。
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