建築設備士の役割とは?資格取得のメリットや試験概要を解説

建築設備士の役割とは?資格取得のメリットや試験概要を解説

建築設備士は、建物の安全性や快適性を支えるために必要な建築設備(換気、空調、電気、給排水衛生など)にまつわる専門知識や技能を有する国家資格です。建築設備士の存在は知っていても「具体的にどのような仕事内容なのだろう」「資格を取得すると何ができるのだろう」と気になっている人もいらっしゃるのではないでしょうか。

この記事では、建築設備士の役割や取得するメリット、試験の概要などを解説します。建築関連の資格に興味のある人は、ぜひ参考にしてください。

目次

建築設備士とは?

建築設備士は、建物の安全性や快適性を支えるために必要な建築設備(空調、換気、給排水衛生、電気など)に関する専門知識や技能を有する国家資格です。

建築設備は年々高度化・複雑化しており、専門家による正確な設計・監理が不可欠となっています。建築設備士は、そうした設備面に特化したアドバイザーとして建築プロジェクトに参加し、建物の機能性を高めるための業務にあたります。

建築設備士の業務内容

建築設備士は、建築士に対して、高度化・複雑化した建築設備全般の設計・工事監理のアドバイスを行う役割です。

具体的には、空調、給排水、電気設備などの設計で技術的な支援を提供し、プロジェクトが法的基準を満たしつつ効率的に進行するためのサポートをします。

工事の進捗や施工の質を監視し、必要に応じて修正や改善を提案する役割も担うため、専門知識だけでなく高度なコミュニケーション能力も求められます。

建築士との違い

建築士は、建物全体の設計や工事監理を担当する責任者です。一方、建築設備士は建築設備に関して専門的なアドバイスを提供する存在で、自ら設計や工事監理を行うことはありません。

また、建築士は構造、内装、外観などの設計に関与しますが、建築設備士は、建築士が行う設計に対して建築設備の面から技術的な支援を行う、いわば補佐的な役割を担います。

建築設備士資格を取得するメリット

建築設備士の資格を取得すると幅広い業務に対応でき、キャリアを形成するうえで大きなメリットが得られます。ここでは、具体的な5つのメリットを解説します。

今後必要性が高まる見込み

2025年度から住宅の省エネ基準適合が義務化されることにより、一般住宅でも断熱性能や高気密設計が求められるようになります。そのため、省エネ性能の高い設備設計や施工の専門知識を持つ建築設備士のニーズはさらに高まることが予想されています。将来的なキャリアアップも期待できるでしょう。

建築士へのステップアップに有利になる

建築設備士の資格を取得すると、実務経験がなくても建築士試験の受験が可能になります。通常、建築士試験には一定の実務経験が求められますが、建築設備士の資格を持つことで、この条件が免除されます。建築士を目指している人にとっては大きなメリットとなります。

防火対象物点検資格者講習が受講できる

建築設備士として5年以上の実務経験があると、防火対象物点検資格者講習の受講資格が得られます。この資格は、商業施設やオフィスビルなどで防火設備の点検を行うために必要です。受講によって安全管理に直結する専門的な知識と技能を持つことが証明でき、建築設備士としての業務範囲がさらに広がるでしょう。

設備設計一級建築士の受験資格が緩和される

建築設備士の資格を取得すると、設備設計一級建築士試験の受験資格が緩和されます。設備設計部分の講義と修了考査が免除となるため、設備設計分野でのキャリアをスムーズに進めることが可能です。設備設計に特化したプロフェッショナルとしての地位を確立するうえで有利となるでしょう。

建築設備検査員の講習科目が一部免除される

建築設備士の資格を取得すると、建築設備検査員講習の受講要件が緩和され、受講科目が一部免除されます。建築設備検査員は、特定のオフィスビルや施設の安全性を保つために定期的な設備点検を行う資格です。講習科目が一部免除されることで資格取得の負担が軽減され、スムーズなキャリアアップが実現するでしょう。

建築設備士試験の概要

建築設備士試験は、一般社団法人建築設備技術者協会が運営する、建築士法に基づく国家試験です。毎年1回、第一次試験と第二次試験に分けて行われます。

受験資格・試験科目

建築設備士試験の受験資格は以下の通りとなっています。

受験資格
学歴を有する者(大学、短期大学、高等学校、専修学校等の正規の建築、機械又は電気に関する課程を修めて卒業した者)
一級建築士等の資格取得者
・建築設備に関する実務経験を有する者

参照:公益財団法人 建築技術教育普及センター|令和6年建築設備士試験の案内

それぞれの受検資格に応じて、建築設備に関する2〜9年の実務経験が必要です。

建築設備士試験の試験科目は以下の通りとなっています。

試験科目
試験形式内容
第一次試験
(学科)
建築一般知識、建築法規及び建築設備
第二次試験
(設計製図)
建築設備基本計画及び建築設備基本設計製図

参照:一般社団法人 建築設備技術者協会|建築設備士試験

学科と設計製図試験を通して、建築設備に関する知識と能力が問われます。

第二次試験(設計製図)の過去の課題は以下の通りです。

令和5年市街地に建つ図書館
令和4年市民センター(ZEBを目指した建築物)
令和3年市街地に建つホテル

参照:公益財団法人 建築技術教育普及センター|建築設備士試験データ

費用や日程・時間

建築設備士試験の受験費用は以下の通りとなっています。ネットでの受付となり、クレジットカードやコンビニエンスストア、ペイジーで支払いが可能です。

受験費用
36,300円(非課税)
(他に、ネット受付事務手数料が必要)

参照:公益財団法人 建築技術教育普及センター|令和6年建築設備士試験の案内

建築設備士試験は毎年1回実施されます。参考までに、令和6年度の日程・時間は以下の通りでした。

スクロールできます
試験区分試験日時間割
第一次試験
(学科)
6月23日(日)9:45~10:00(15分)注意事項等説明
10:00~12:30
(2時間30分)
建築一般知識
建築法規
12:30~13:30(1時間)休憩
13:30~13:40(10分)注意事項等説明
13:40~17:10
(3時間30分)
建築設備
第二次試験
(設計製図)
8月25日(日)10:45~11:00(15分)注意事項等説明
11:00~16:30
(5時間30分)
建築設備基本計画
建築設備基本設計製図

参照:公益財団法人 建築技術教育普及センター|令和6年建築設備士試験の案内

建築設備士試験の受付期間は、令和6年は2月26日(月)10:00~令和6年3月15日(金)16:00でした。合格発表日は、第一次試験(学科)令和6年7月25日(木)、第二次試験(設計製図)は令和6年11月7日(木)です。

合格率と難易度

令和元年から令和5年度までの、建築設備士試験の第一次試験、第二次試験、全体それぞれの合格率は以下の通りとなっています。

年度第一次検定第二次検定全体
令和5年30.0%48.7%19.1%
令和4年31.4%46.4%16.2%
令和3年32.8%52.3%18.8%
令和2年25.7%41.4%13.5%
令和1年26.8%54.3%19.1%

参照:公益財団法人 建築技術教育普及センター|建築設備士試験データ

第一次試験の合格率は例年30%ほど、第二次試験の合格率は例年40~50%ほど、全体の合格率は例年20%弱と、建築技術職では合格率が低く、難易度の高い資格です。

試験内容は、科目や範囲は狭いものの、建築設備の専門的な知識や能力を問われる難易度の高い出題となっています。

追加で取得しておくと良い資格

建築設備士資格は、建築設備に関する専門的な知識と技術を証明できる国家資格です。キャリアや知識、技能の向上に向けて、以下の3つの資格も追加で取得しておくことをおすすめします。

電気工事施工管理技士

電気工事施工管理技士は、建物などの電気工事を行うにあたって工事が安全かつ円滑に進むよう管理する資格で、2級と1級に分かれています。

2級電気工事施工管理技士は、小規模な電気工事の現場管理や補佐的な業務を担当できます。専任技術者や主任技術者となり現場での指揮や電気工事の進捗管理を行い、安全で円滑な工事の推進に努めます。主に住宅や小規模施設の電気工事現場で重宝される資格です。

1級電気工事施工管理技士は、大規模な電気工事の現場責任者として働ける資格です。公共施設や大型ビル、工場などの大規模プロジェクトに関わることができ、電気工事全体の進捗管理や安全対策、コスト管理を担当します。

管工事施工管理技士

管工事施工管理技士は、建物の空調や給排水設備などの管工事の施工管理を行うための資格で、電気工事施工管理技士と同様、2級と1級があります。

2級管工事施工管理技士は、比較的小規模な管工事の現場管理を行う資格で主任技術者・専任技術者となることができます。住宅や中小規模のオフィスビルの空調設備、給排水設備の施工を管理し、工事の進捗や品質、安全を確保する役割を担います。

1級管工事施工管理技士は、主任技術者・監理技術者・専任技術者として大規模な管工事現場に携われる資格です。公共施設や大型ビル、商業施設などの大規模な空調設備、給排水設備の施工管理を担当できます。

消防設備士

消防設備士は、建物の消防設備の設計・施工・メンテナンスを適切に行うための資格です。主に火災報知器やスプリンクラー、消火器などの消防設備の工事や点検を行います。消防設備の設置は法令により義務付けられており、適切な設置と保守点検が重要です。

消防設備士については以下の記事でも解説しています。

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建築設備士の就職先と将来性

建築設備士は、建物の安全性や快適性を維持するための専門知識を持つ重要な職種です。ここでは、建築設備士の主な就職先と将来性を解説します。

建築設備士の主な就職先

建築設備士の主な就職先は、建築や設備に関する幅広い業界にわたります。具体的な就職先は下記の通りです。

設計事務所

設計事務所は、大手から小規模な事務所まで幅広くあり、オフィスビルやマンションから一般住宅まで、さまざまな現場で建築設備の助言や情報提供を行います。建築設備士は電気、空調、給排水などの設備を効率的に配置し、利用者の快適さとエネルギー効率を両立させるための役割を担います。

建設会社

オフィスビルやマンションを中心に、幅広い建設現場で設備の施工が適切に行われているかを確認し品質や安全性を確保するため、建築設備士が重要な役割となります。

設備メーカー

建築設備を専門で作る会社です。施工会社や設計事務所と連携し、設備の導入やメンテナンスをサポートする役割を担います。

不動産会社

不動産会社でも建築設備士が求められています。不動産の管理・保全において建築設備のメンテナンスは重要であり、建築設備士の知識が物件の管理に役立ちます。

建築設備士の将来性

建築設備士は、世の中の安全性への関心の高まりを受け、今後ますます需要が高まると予想されます。近年は、耐震、省エネルギー対策、高齢化社会に対応したバリアフリー設計などが注目されており、建築基準法や防災に関する法律も強化されていることから、建築設備の専門知識を持つ建築設備士の力が今後より求められるようになるでしょう。

まとめ

建築設備士は、建物の安全性や快適性を支えるために必要な建築設備(換気、空調、電気、給排水衛生など)に関する専門知識や技能を有する国家資格であり、年々高度化・複雑化する建築設備の業界で存在価値が高まっています。

建築設備士の需要は今後大きな伸びが予想されており、長く安定して働ける可能性が高いだけでなく、関連資格を取得するうえでもメリットがあります。より大きな責任を担うポジションや高収入を得るため、ぜひ資格取得を目指してみてはいかがでしょうか。


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