1級電気工事施工管理技士とは、電気工事に際して現場管理を行うための高度な専門知識と技術を有した国家資格の技術者です。電気工事の仕事に関わるなかで、1級電気工事施工管理技術検定に合格したいと思っている人は多いのではないでしょうか。
この記事では、1級電気工事施工管理技術検定の概要や取得するメリット、合格するための効果的な勉強方法などを解説します。
1級電気工事施工管理技士とは?
1級電気工事施工管理技士は、電気工事現場の施工計画の作成、安全管理、品質管理、工程管理原価管理を担う、国家資格を取得した専門技術者です。
一定規模以上の特定建設現場では、営業所ごとに専任の技術者、現場の監理技術者の設置が法律で義務付けられています。1級電気工事施工管理技士は、この専任技術者、監理技術者の役割を担うことができます。特に大規模な建設現場や重要なプロジェクトで重宝され、社会的にも高く評価される存在です。
そのほか電気工事に関する資格との違い
次に、1級電気工事施工管理技士とそのほかの電気関連資格との違いを解説します。
電気工事士との違い
電気工事士は、電気設備の設置やメンテナンス、修理など、現場での作業を実際に担う技術者です。一方、1級電気工事施工管理技士は、現場全体の管理・監督を担当します。電気工事士は、1級電気工事施工管理技士が作成した計画のもとに作業を行うことになります。
2級電気工事施工管理技士との違い
2級電気工事施工管理技士は、中小規模の工事現場での管理を担当します。2級でも主任技術者としての業務を行えますが、1級電気工事施工管理技士のように大規模プロジェクトの監理技術者にはなれません。
1級電気工事施工管理技士は、2級電気工事施工管理技士に比べて管理できる現場の規模や責任の範囲が広い分、企業からの評価や報酬が高くなる傾向にあります。
1級電気工事施工管理技士補との違い
1級電気工事施工管理技士補とは、1級電気工事施工管理技術検定の第一次検定に合格した人を指します。1級電気工事施工管理技士とは異なり、監理技術者や専任技術者としての正式な業務は行えません。補助的な立場で経験を積みながら、1級電気工事施工管理技士に向けた実務を学びます。
一定規模以上の特定建設現場では監理技術者を専任で設置する決まりですが、技師補を専任で置くと監理技術者は2つの現場の兼任が可能になります。

1級電気工事施工管理技術検定の概要
1級電気工事施工管理技術検定は、一般財団法人建設業振興基金が運営する国家試験です。毎年1回、第一次検定と第二次検定が行われます。
受検資格
1級電気工事施工管理技術検定には第一次検定と第二次検定があり、令和6年度に受検資格が改訂されました。改定後の受検資格はそれぞれ下記の通りとなっています。
第一次検定
必要条件 |
---|
試験実施年度に満19歳以上となる者 |
参照:一般財団法人 建設業振興基金|1級電気工事施工管理技術検定のご案内
第二次検定
受検資格要件 | 第二次検定の受検に必要な実務経験年数 |
---|---|
1級第一次検定合格者 | 1級電気工事第一次検定合格後、実務経験5年以上 1級電気工事第一次検定合格後、特定実務経験1年以上を含む実務経験3年以上 1級電気工事第一次検定合格後、監理技術者補佐としての実務経験1年以上 |
1級第一次検定合格者、および2級第二次検定合格者 | 2級電気工事第二次検定合格後、実務経験5年以上 2級電気工事第二次検定合格後、特定実務経1年以経験を含む実務経験3年以上 |
1級第一次検定受検予定、および2級第二次検定合格者 | 2級電気工事第二次検定合格後、実務経験5年以上 2級電気工事第二次検定合格後、特定実務経験1年以上を含む実務経験3年以上 |
1級第一次検定、および第一種電気工事士試験合格または免状交付者 | 第一種電気工事士試験合格または免状交付後、実務経験5年以上 第一種電気工事士試験合格または免状交付後、特定実務経験1年以上を含む実務経験3年以上 |
1級第一次検定受検予定、および第一種電気工事士試験合格または免状交付者 | 第一種電気工事士試験合格または免状交付後、実務経験5年以上 第一種電気工事士試験合格または免状交付後、特定実務経験1年以上を含む実務経験3年以上 |
参照:一般財団法人 建設業振興基金|1級電気工事施工管理技術検定のご案内
第一次検定は、試験実施年度に満19歳以上であれば誰でも受検資格を得られます。一方、第二次検定は、合格している検定や取得している資格によって1~5年の実務経験を積むことで受検資格が得られます。
令和6年に受検資格が改定されましたが、令和10年までは旧受検資格を満たしている人も検定を受けることが可能です。旧受検資格については以下のページにてご確認ください。
検定実施日程と費用
令和7年度の検定実施のスケジュールや日程は下記の通りとなっています。
内容 | 日程 |
---|---|
第一次・第二次検定申込受付期間 | 2月14日(金)~ 2月28日(金) |
第一次検定受検票送付 | 6月23日(月) |
第一次検定実施 | 7月13日(日) |
第一次検定合格発表 | 8月22日(金) |
当年度第一次検定合格者の 第二次検定受検手数料払込期間 | 8月22日(金)~ 9月5日(金) |
第二次検定受検票送付 | 9月29日(月) |
第二次検定実施 | 10月19日(日) |
第二次検定合格発表 | 令和8年1月9日(金) |
参照:一般財団法人 建設業振興基金|令和7年度 1級電気工事施工管理技術検定 第一次検定・第二次検定 受検の手引
受検費用は、第一次検定と第二次検定それぞれ以下の通りです。
受験費用 | |
---|---|
第一次検定 | 15,800円(非課税) |
第二次検定 | 15,800円(非課税) |
参照:一般財団法人 建設業振興基金|1級電気工事施工管理技術検定のご案内
第一次検定の内容
1級電気工事施工管理技術検定の第一次検定の内容は下記の通りとなっております。
検定科目 | 解答形式 |
---|---|
電気工学など | 四肢択一 (マークシート方式) |
施工管理法 | 四肢択一 (マークシート方式) |
五肢択一 (マークシート方式) | |
法規 | 四肢択一 (マークシート方式) |
参照:一般財団法人 建設業振興基金|令和7年度 1級電気工事施工管理技術検定 第一次検定・第二次検定 受検の手引
第一次検定では、午前の2時間30分と午後の2時間に分けて知識と能力を問われる問題が出題されます。
第二次検定の内容
1級電気工事施工管理技術検定の第二次検定の内容は下記の通りとなっております。
検定科目 | 解答形式 |
---|---|
施工管理法 | 五肢択一 (マークシート方式) |
記述 |
参照:一般財団法人 建設業振興基金|令和7年度 1級電気工事施工管理技術検定 第一次検定・第二次検定 受検の手引
第二次検定の試験時間は3時間で、記述形式の問題を含んだ知識と能力を問われる問題が出題されます。
合格率と難易度
令和4年(2022年度)から6年度(2024年度)までの、1級電気工事施工管理技術検定の第一次検定と第二次検定それぞれの合格率は以下の通りとなっています。
年度 | 第一次検定 | 第二次検定 |
---|---|---|
令和6年度 (2024年度) | 36.7% | – |
令和5年度 (2023年度) | 40.6% | 53.0% |
令和4年度 (2022年度) | 38.3% | 59.0% |
引用:一般財団法人建設業振興基金|1級電気工事施工管理技術検定第一次検定 実施結果
一般財団法人建設業振興基金|令和5年度 1級電気工事施工管理技術検定 結果表
一般財団法人建設業振興基金|令和4年度 1級電気工事施工管理技術検定 結果表
合格率は第一次検定が40%前後で、第二次検定が50%程度となっています。
第一次検定の合格基準は、全体得点60%以上、施工管理法の能力を問う問題で得点50%以上です。また、第二次検定の合格基準は得点60%以上となっています。難易度はやや高いですが、きちんと対策をすれば十分合格できる試験です。
1級電気工事施工管理技術検定をほかの電気工事関連の資格と難易度を比べると、第三種電気主任技術者より難易度が低く、第一種電気工事士よりも難易度が高い検定となります。
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試験に合格するための勉強法
続いて、1級電気工事施工管理技術検定に合格するための勉強法を4つご紹介します。
通信講座で勉強する
1級電気工事施工管理技術検定の第二次検定には経験記述試験があるため、独学で対策するのは難しいでしょう。おすすめは、通信講座での勉強です。通信講座では講師の添削指導があり、文章の改善点などを指摘してもらえるため、効率的に学習を進められます。
予備校に通う
予備校に通うと、専門の講師から直接指導を受けられ、質問やアドバイスを通じて学習効率を上げられます。重要ポイントを押さえた授業と模擬試験を通じて、無駄なく試験対策を進められるでしょう。実技試験の実践練習や直前対策講座も充実しているため、実務経験が少ない人でも自信を持って試験に臨めます。
講習会に参加する
合格に向けた講習会も各地、またオンラインで開催されており、講習会に参加すると、試験対策の要点を短期間で集中的に学べます。講師からの具体的なアドバイスを受けることで、効率的に弱点を克服できるでしょう。実技試験対策では実際の設備を使った練習もできるため、実践的なスキルを向上させることが可能です。
過去問を繰り返し解いていく
過去問を繰り返し解くと、出題傾向が把握でき、苦手分野を見つけられます。解答と解説をしっかり読み込めば、なぜその答えになるのかを理解できるでしょう。数年分の過去問を解き、広範囲の知識を身につけましょう。
1級電気工事施工管理技士を取得するメリット
1級電気工事施工管理技士を取得するとどんなメリットが得られるのでしょうか。ここでは3つのメリットをご紹介します。
キャリアアップが目指せる
1級電気工事施工管理技士を取得すると、主任技術者や監理技術者など、現場の責任者として重要な役割を任されます。現場全体を統括し、計画の立案や進捗管理、品質の確保などを行う、現場の中核を担う役割です。責任ある立場に就くことで会社内での評価も高まり、キャリアアップが期待できます。
収入アップの可能性がある
1級電気工事施工管理技士を取得すると、責任ある立場に就くことが多くなり、その役割に応じて収入アップの可能性が広がります。企業によっては資格手当が支給されることもあります。
転職市場での価値が高まる
1級電気工事施工管理技士を取得していると、電気工事に関する高い知識と豊富な実務経験があることが証明できます。そのため転職市場で自分のスキルをアピールしやすくなり、即戦力として高く評価されるようにもなるでしょう。
まとめ
1級電気工事施工管理技士は、電気工事に関して高度な知識と技術を持った技術者であり、建設現場では法律上の重要な役割も担っている必要不可欠な存在です。多くの現場で必要とされ、やりがいを感じながら働けるでしょう。
収入アップにつながるなど、資格取得にはさまざまなメリットがありますが、第一次検定と第二次検定の2つの試験を乗り越えなければなりません。この記事を通して合格するための勉強法やポイントを把握し、資格取得に向けて計画的な学習を進めていきましょう。
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