1級建築施工管理技士は、建設業界で現場管理を行うための高度な専門知識と技術を有する技術者です。建築業界で働く人のなかには、1級建築施工管理技術検定に興味があり、どういう資格なのか詳しく知りたい、受けたいけど、どう対策すべきなのか分からないと思っている人もいらっしゃるのではないでしょうか。
この記事では、1級建築施工管理技士の仕事内容や試験の概要、取得するメリット、合格するための効果的な勉強方法などを解説します。
1級建築施工管理技士とは?
1級建築施工管理技士とは、国土交通省が管轄する国家資格の保有者で、建築施工の現場管理を行うための高度な専門知識と技術を持つ専門家として認められた存在です。大規模な建設工事で現場監督としての責任を負い、工事の計画・施工・安全管理などを総合的に指導・管理する役割を担います。
1級建築施工管理技士ができること
1級建築施工管理技士は、建築業界で専任の技術者、主任技術者、監理技術者の役割を担うことができます。
建設業法では、事業者は営業所ごとに専任の技術者の配置が必須とされています。専任の技術者は、請負契約の適正な締結と、その履行を確保する役割を担っています。そのため、専任の技術者がいなければ建設業許可を維持できません。
また、建設業者はすべての現場に主任技術者を配置する必要があります。主任技術者は、現場の技術指導監督の役割を担い、施工の品質や安全を確保します。
さらに、現場の中でも発注者から直接工事を請け負った建設業者は、その下請け契約の請負代金の額が4,500万円以上(建築一式工事の場合は7,000万円以上)となる場合、監理技術者を配置する必要があります。
2級建築施工管理技士との違い
2級建築施工管理技士と1級建築施工管理技士の違いは、従事できる現場の規模や、特定建設業で責任者として業務を行う権利にあります。
1級建築施工管理技士は、大規模な建設現場で主任技術者や監理技術者として業務にあたることが可能です。また、特定建設業の建設業許可を取得するためには1級施工管理技士の資格を持った専任技術者が必要です。
一方、2級施工管理技士は主任技術者として建設現場に携わることができますが、監理技術者となることはできません。
1級建築施工管理技士補との違い
1級建築施工管理技士補は、1級建築施工管理技術検定の第一次検定に合格した人を指します。この資格を持っていると、監理技術者のアシスタントとして現場での実務経験を積むことができます。監理技術者の指導のもと、現場管理の補助業務を行いながら実際の施工管理業務に触れられるため、将来的に1級建築施工管理技士を目指すうえで有効なステップとなります。

1級建築施工管理技術検定の概要
1級建築施工管理技術検定は、一般財団法人建設業振興基金が運営する国家試験です。毎年1回、第一次検定と第二次検定が行われます。
受検資格
1級建築施工管理技術検定には第一次検定と第二次検定があります。令和6年4月1日に新制度が施行され、受検資格が改正されました。
第一次検定
必要条件 |
---|
19歳以上(当該年度末時点) |
参照:一般財団法人 建設業振興基金|1級建築施工管理技術検定のご案内
新制度が施行される前の第一次検定の受検資格は、2級建築施工管理技術検定合格者は条件なく取得でき、合格者以外は学歴によって3〜15年の実務経験が必要でした。一方、新制度の施行後は、当該年度末時点で年齢が19歳以上であれば誰でも受検できるようになりました。
第二次検定
受検資格要件 | 第二次検定の受検に必要な実務経験年数 |
---|---|
1級第一次検定合格者 | 実務経験5年以上 特定実務経験1年以上を含む実務経験3年以上 監理技術者補佐としての実務経験1年以上 |
参照:一般財団法人 建設業振興基金|1級建築施工管理技術検定のご案内
新制度が施行される前は、2級建築施工管理技術検定合格者であれば合格後の実務経験5年で受検資格を取得でき、合格者以外は学歴によって3年〜15年の実務経験が必要でした。
新制度の施行後に受検資格を得るためには、1級建築施工管理技術検定の第一次検定合格後に上記の実務経験が必要となります。

費用や日程・時間
受検費用は、第一次検定と第二次検定それぞれ以下の通りとなっています。
受検費用 | |
---|---|
第一次検定 | 10,800円(非課税) |
第二次検定 | 10,800円(非課税) |
参照:一般財団法人 建設業振興基金|1級建築施工管理技術検定のご案内
試験は毎年1回実施されます。令和7年度の日程は以下の通りです。
試験日程 | 時間 | |
---|---|---|
第一次検定 | 2025年7月20日(日) | 午前:2時間30分 午後:2時間 |
第二次検定 | 2025年10月19日(日) | 午後:3時間 |
参照:一般財団法人 建設業振興基金|1級建築施工管理技術検定のご案内
検定問題
受検資格の実務経験年数が変更されたことにより、検定問題が一部見直されました。問題は以下の通り出題されます。
第一次検定
検定科目 | 解答形式 |
---|---|
建築学など | 四肢択一 (マークシート方式) |
施工管理法(知識) | 四肢択一 (マークシート方式) |
施工管理法(応用能力) | 五肢択一 (マークシート方式) |
法規 | 四肢択一 (マークシート方式) |
参照:一般財団法人 建設業振興基金|検定問題の見直しについて
第二次検定でも、受検資格が学歴問わず一定の実務経験年数に変更されたため、基礎的な知識を確認する設問を充実させるなど、問題が見直されました。
第二次検定
検定科目 | 解答形式 |
---|---|
施工管理法(知識) | 五肢択一 (マークシート方式) |
記述 |
参照:一般財団法人 建設業振興基金|検定問題の見直しについて
なお、第二次検定の問題は、模範解答の暗記ではなく、自身の経験に基づかなければ回答できないようなものに見直しが行われました。詳しくは以下のページをご覧ください。
合格率と難易度
令和3年から(2021年度)令和5年度(2023年度)までの1級建築施工管理技術検定の第一次検定・第二次検定それぞれの合格率は以下の通りとなっています。
年度 | 第一次検定 | 第二次検定 |
---|---|---|
令和5年度 (2023年度) | 41.6% | 45.5% |
令和4年度 (2022年度) | 46.8% | 45.2% |
令和3年度 (2021年度) | 36.0% | 52.4% |
引用:一般財団法人建設業振興基金|令和5年度 1級建築施工管理技術検定 結果表
一般財団法人建設業振興基金|令和4年度 1級建築施工管理技術検定 結果表
一般財団法人建設業振興基金|令和3年度 1級建築施工管理技術検定 結果表
すべてマークシート形式となる第一次検定より、記述形式の問題が含まれる第二次検定のほうが合格率が高い傾向にあります。
資格取得までの流れ
1級建築施工管理技士の資格取得までの流れは以下の通りです。既に第二次検定の受検資格を得るために必要な実務経験を満たしており、第一次検定、第二次検定を同時に受ける場合の流れとなります。
- 第一次検定、第二次検定の受検申し込み
- 第一次検定受検票送付
- 第一次検定
- 第一次検定合格発表
- 第二次検定受検票送付
- 第二次検定
- 第二次検定合格発表
- 資格の登録申請
受検資格を得るために必要な実務経験を満たしていない場合などでは、第一次検定と第二次検定をそれぞれ申し込むことも可能です。
1級建築施工管理技士を取得するメリット
1級建築施工管理技士を取得するとどんなメリットが得られるのでしょうか。ここでは3つのメリットをご紹介します。
現場でさまざまな役割が担える
1級建築施工管理技士の資格を取得すると、現場でさまざまな役割を担えるようになります。
建設現場では、技術的な問題を解決するだけでなく、工期の管理や品質の確保、安全対策など多岐にわたる業務を円滑に進めるためのリーダーシップが求められます。また、計画書作成や予算管理なども1級建築施工管理技士の重要な業務です。
主任技術者・監理技術者になれる
1級建築施工管理技士の資格を取得すると、主任技術者・監理技術者になれます。主任技術者や監理技術者は法律上、建設現場への配置が義務付けられている存在であり、企業にとって必要不可欠な存在として評価されます。
自身のスキルの証明につながる
1級建築施工管理技士は国家資格であり、高度な知識とスキルを習得することで得られる資格です。したがって、自身のスキルをアピールする有効な証明となります。資格取得は自分のキャリアを一歩進めるための大きなステップであり、さらに多くの仕事に挑戦できる機会を広げることにもつながります。
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検定試験に合格するための勉強方法
続いて、1級建築施工管理技術検定に合格するための勉強法を2つご紹介します。
独学で勉強する
独学で勉強するメリットは、自分の都合に合わせて勉強できることと、学習費用を抑えられることにあります。仕事や家庭の事情に合わせて自分のペースで学習を進められるため、効率的な学習が可能です。
ただし、他者からのサポートがないためモチベーションを維持するのが難しく、年1回の検定試験に向けて学習を継続するための工夫が必要となります。
予備校に通う
予備校に通うメリットは、専門講師の指導により効率的な学習ができることや、それによって理解が深まる点にあります。また、最新の試験情報や傾向を把握できる点も魅力です。
一方、授業料や教材費、通学費用などがかかるため、独学に比べて経済的な負担が大きくなることがデメリットとなります。
試験に合格するためのポイント
最後に、1級建築施工管理技術検定に合格するための4つの対策ポイントをご紹介します。
スケジュールを立てる
1級建築施工管理技術検定合格への第一歩として、まずは学習スケジュールを立てましょう。1級建築施工管理技士検定は広範な知識が求められるため、無計画に進めると勉強の効率が落ちてしまいます。検定試験日から逆算して各科目にどのくらいの時間を割くかを明確にし、無理のない計画を立てましょう。
講義動画を見てみる
講義動画を活用すると、学習を効率的に進められます。専門の講師が試験範囲をわかりやすく解説してくれるため、独学での理解が難しい部分もスムーズに学習できるでしょう。動画は自分のペースで何度でも視聴可能なため、苦手な箇所を繰り返し学習できる点が魅力です。
過去問で対策する
過去問で対策することも、1級建築施工管理技術検定に合格するための重要なポイントです。実際の問題形式に慣れれば、本番でも落ち着いて問題に取り組めるでしょう。また、過去問を繰り返し解くことで試験の出題傾向や頻出問題を把握でき、どの分野に重点を置くべきかが明確になります。
模擬試験を受ける
模擬試験を受けることは、試験本番に向けた重要なステップの一つです。模擬試験では実際の試験と同様の環境で問題に取り組めるため、本番さながらの緊張感を体験しながら自分の実力を確認できます。模擬試験後には解説を確認し、どの部分でミスをしたのかを振り返って、弱点を補強しましょう。
まとめ
1級建築施工管理技士は建設業界で高度な知識と技術を持った技術者であり、建設現場では法律上の重要な役割も担う必要不可欠な存在です。
1級建築施工管理技士の資格を取得すると、収入アップや自らのスキルの証明などにつながりますが、第一次検定と第二次検定の2つの試験を乗り越えなければなりません。この記事を通して1級建築施工管理技術検定に合格するための勉強法やポイントを把握し、ぜひ資格取得に挑戦してみましょう。
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