一級建築士の難易度は?二級との違いや合格率、合格するための勉強方法を紹介

一級建築士の難易度は?二級との違いや合格率、合格するための勉強方法を紹介

一級建築士とは、すべての建物を設計、工事監理できる国家資格です。そのため一級建築士試験の難易度は高く、簡単に合格できる資格ではないと感じている人も多いでしょう。では、なぜ一級建築士の試験は難易度が高いのでしょうか。

この記事では、一級建築士の業務や試験の概要、難易度の高さの理由、合格するための効果的な勉強方法などを解説します。

目次

建築士の業務とは

建築士は、建物の設計や工事監理、法規の確認などの業務を行う国家資格の専門職です。

ここでいう設計とは、建物の構造や外観、内装などを決め、工事の際に使用する設計図や仕様書を作成する仕事を指します。また工事監理とは、設計図や仕様書の通りに工事が進んでいるかを確認する仕事です。建築士法により、資格保有者でなければ一定の建物の設計、工事監理はできないと定められています。

一級建築士と二級建築士の違い

二級建築士と一級建築士では、それぞれ設計できる建物の用途や規模、構造が異なります。ここでは免許の交付元の違いも含めてご紹介します。

取り扱える業務範囲

二級建築士は、比較的小規模な建物の設計・工事監理ができます。一方、一級建築士はすべての用途や規模・構造の建物の設計・工事監理が可能です。

たとえば二級建築士は、木造建築の場合、高さ13メートル以下かつ軒高9メートル以下、2階建て以下の木造以外の建物であれば延べ面積300平方メートル以下まで、鉄筋コンクリートの場合、高さが13メートルかつ軒高9メートル以下のもの、階数3以下で延べ面積が300平方メートル以下であれば設計・工事監理ができます。

一級建築士の場合は、すべての構造で高さが13メートルまたは軒高9メートルを超えるもので、1,000平方メートルを超える建物や、鉄筋コンクリート造や鉄骨造などで延べ面積が300平方メートルを超えるもの、木造で延べ面積が500平方メートルを超える特殊建築物(公共施設や、特に規制すべき建築物)の取り扱いが可能です。
したがって、すべての建物に関して業務を行いたい場合は一級建築士の資格が必要となります。

A:誰でも可能
B:一級建築士、二級建築士、木造建築士のみ
C:一級建築士、二級建築士のみ
D:一級建築士のみ

一級建築士と二級建築士の取り扱える業務範囲

参照:公益財団法人 建築技術教育普及センター|建築士の種類と業務範囲

免許の交付元

二級と一級では免許の交付元が異なります。二級建築士は各都道府県知事から与えられる免許で、交付元は都道府県となり、一級建築士は国土交通大臣から与えられる免許で、国土交通省から交付されます。

一級建築士の試験概要

一級建築士の試験は建築士法に基づいて実施され、公益財団法人建築技術教育普及センター(JAEIC)が運営しています。

試験は毎年1回、学科試験と設計製図試験に分かれて実施されます。例年、学科試験は7月に、設計製図試験は10月に行われます。

受検資格

一級建築士の試験を受検するためには、建築に関係する学歴、または二級建築士や建設設備士の資格が必要です。

受検資格
大学、短期大学、高等専門学校、専修学校等において指定科目を修めて卒業した者
二級建築士
建築設備士
その他国土交通大臣が特に認める者(外国大学を卒業した者等)

なお、指定科目を履修して満たすべき学歴要件は、入学年が平成21年以前か以降かで異なるため、以下より確認をしましょう。

また令和2年3月1日より、実務経験がなくても受検できるようになりました。そのため大学卒業直後でも受検は可能ですが、免許の登録の際には実務経験が必須要件になっています。

試験の流れは、以下をご覧ください。

試験の出題範囲

一級建築士試験の出題範囲は非常に広範です。試験の出題範囲を以下の表にまとめました。

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試験の出題範囲
試験区分出題形式出題科目出題数出題時間
学科試験四肢択一式計画20問計2時間
環境・設備20問
法規30問1時間45分
構造30問計2時間45分
施工25問
設計製図試験事前に公表される課題の設計図書の作成設計製図1課題6時間30分

参照:公益財団法人建築技術教育普及センター|令和6年 一級建築士試験 受験要領

学科試験に合格すると、設計製図試験が受けられます。幅広い知識と実技が求められるため、しっかりとした準備をしましょう。

以下、過去3年間の合格基準点を表にまとめました。学科試験では、各科目と総合得点で合格基準点を満たしている必要があります。

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各科目及び総得点の合格基準点
年度計画環境・設備法規構造施工総合得点
令和5年111116161388
令和4年111116161391
令和3年101116161387

参照:公益財団法人建築技術教育普及センター|令和5年一級建築士試験「学科の試験」の合格基準点等について
公益財団法人建築技術教育普及センター|令和4年一級建築士試験「学科の試験」の合格基準点等について
公益財団法人建築技術教育普及センター|令和3年一級建築士試験「学科の試験」の合格基準点等について

上記の表の通り、総合得点は年によって差がありますが、各科目では差がほとんどありません。

一級建築士試験の総合合格率は年度によって違いますが、ここ数年はおおよそ10%となっています。過去3年間の学科・設計製図試験それぞれの合格率と総合合格率を以下の表にまとめました。

試験の合格率と難易度

年度学科試験合格率設計製図試験合格率総合合格率
令和5年度16.2%33.2%9.9%
令和4年度21.0%33.0%9.9%
令和3年度15.2%35.9%9.9%

参照:公益財団法人建築技術教育普及センター|直近5年間の試験結果

合格率の低さから、一級建築士試験の難易度が高いことが分かります。合格率について、さらに詳しく見ていきましょう。

学科試験の合格率

学科試験の合格率は年度によって違いますが、ここ数年はおおよそ10%台となっています。全科目で合格点をとらなければいけない点が、学科試験の難易度を上げています。

学科試験の過去3年間の受検者数・合格者数・合格率を以下の表にまとめました。

年度学科試験合格率設計製図試験合格率総合合格率
令和5年度28,118人4,562人16.2%
令和4年度30,007人6,289人21.0%
令和3年度31,696人4,832人15.2%

参照:公益財団法人建築技術教育普及センター|直近5年間の試験結果

設計製図試験の合格率

設計製図試験の合格率は年度によって違いますが、ここ数年はおおよそ30%台となっています。学科試験を突破しなければ設計製図試験を受けられないため、受検者は学科試験と比べ少なくなります。一方、合格率は学科試験よりも高くなっています。

設計製図試験の過去3年間の受検者数・合格者数・合格率を以下の表にまとめました。

年度学科試験合格率設計製図試験合格率総合合格率
令和5年度10,238人3,401人33.2%
令和4年度10,509人3,473人33.0%
令和3年度10,499人3,765人35.9%

参照:公益財団法人建築技術教育普及センター|直近5年間の試験結果

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一級建築士の難易度が高い理由

一級建築士試験の合格率をご紹介しましたが、なぜこれほど難易度が高いのでしょうか。その理由を解説します。

学科と製図2つの試験に合格する必要がある

一級建築士の難易度が高い理由の一つは、学科試験と設計製図試験の両方に合格する必要があるためです。特に、製図試験は毎年課題が変わるため対策しにくい傾向にあります。

公益財団法人建築技術教育普及センターの「令和5年の一級建築士試験「設計製図の試験」合格基準等について」では 、採点のポイントや採点結果の区分(成績)について記載されています。

製図試験の合格基準について詳しくは以下をご覧ください。

なお、製図試験は必ずしも学科試験の直後に受ける必要はなく、合格後5年目までは有効です。6年目からは学科試験の再受検が必要となります。

学科試験の出題範囲が広い

学科試験の出題範囲が広いことも、一級建築士の難易度が高い理由として挙げられます。

学科試験は5科目の多岐にわたる分野から出題され、各科目、総得点ともに合格基準を満たすことが必要です。また、科目ごとに分けて受検することができないため、すべての科目をバランスよく理解しておくことが重要です。

法改正によって出題内容が変わってくる

法改正によって出題内容が変わることも試験の難易度を高めています。建築法規は頻繁に改正されるため、常に最新の法令を理解しておかなければなりません。その学び直しの大変さが試験の難易度を引き上げています。

モチベーションを維持するのが難しい

一級建築士の試験は1年に1度しかなく、不合格になると、再び1年間勉強をしなければなりません。特に仕事や家庭と両立しながら勉強に取り組む場合は、モチベーションの維持が大きな課題となるでしょう。

試験に合格するための勉強方法やポイント

最後に、試験に合格するための勉強方法や勉強のポイントをご紹介します。

インプットとアウトプットを繰り返す

試験に合格するためには、知識のインプットとアウトプットを繰り返すことが重要です。まずは基礎知識をしっかりと身につけ、その後、過去問や問題集を繰り返し解くことで実際の試験形式に慣れることが合格のポイントとなります。

試験対策講座を受講する

一級建築士試験に独学で合格するのは大変困難です。専門講座を受講するなどして合格への近道を探りましょう。専門の講師から直接指導を受ければ、より効率的に学習を進められます。また講座には、最新の出題傾向や重要ポイントを教えてくれるメリットもあります。

過去問題や問題集で出題の傾向をつかむ

過去の問題や問題集を活用すると、出題の傾向がつかめるようになります。特に、過去問を繰り返し解くことは効率の良い勉強法となります。ただし、何十年も前の過去問の場合、法改正によって出題内容が変わっている可能性がありますので注意しましょう。

長期的なスケジュールを立てておく

一級建築士試験は1年に1度しかないため、長期間の勉強となります。モチベーションを維持していくためにも、長期的なスケジュールを立てて挑むことが重要です。各科目の勉強期間や試験対策のスケジュールを事前に設定し、無理のない範囲で進めましょう。

苦手な科目は重点的に勉強する

一級建築士試験は出題範囲が広く、すべての科目で基準点を超える必要があるため、苦手科目を重点的に学習することが有効です。過去問や問題集を解き、自身の苦手科目はどれかを認識しましょう。

まとめ

一級建築士の試験は総合合格率が約10%と難易度が高く、広い出題範囲の学科試験と毎年課題が変わる設計製図試験の両方を合格しなければなりません。しかし、一級建築士の資格を取得すればすべての建物を設計・工事監理ができる点では、とても魅力のある資格です。

一級建築士を目指す場合は、長期的かつ実現可能なスケジュールを立て、万全を期した状態で1年に1回の試験に臨めるよう準備しましょう。


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